在留資格「技能」について
在留資格「技能」について
在留資格「技能」別表第一の2の表の「技能」の下欄
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する業務に従事する活動 |
日本経済の国際化の進展に対応し、熟練技能労働者を外国から受け入れるために設けられたものです。
①調理人(西洋料理人、中華料理人)、製菓技術者、ソムリエ等
②外国様式の建築物の建築技能者
③外国に特有の製品の製造又は修理技能者
④毛皮、宝石加工技術者、ペルシャ絨毯加工師
⑤動物の調教師
⑥石油探査・地熱開発技能者
⑦航空機操縦者
⑧スポーツの指導者
(審査要領)
「産業上の特殊な分野」
外国に特有な産業分野、我が国の水準よりも外国の技能レベルが高い産業分野及び我が国において従事する技能者が少数しか存在しない産業分野
「熟練した技能を有する」
個人が自己の経験の集積によって有することとなった熟練の域にある技能を必要とすることを意味し、特別な技能、判断等を必要としない機械的な作業である単純労働と区別されます。
「技術」は外国人の行うことができる活動が自然科学の分野の専門技術・知識を要する業務に従事する活動
「技能」は当期間の修練と実務経験を通して修得できる一定水準以上の技量を要する業務に従事する活動である。
「本邦の公私の機関」
国、地方公共団体、独立行政法人、会社、公益法人等の法人のほか、任意団体も含まれます。日本に事務所、事業所等を有する外国の国、地方公共団体、外国の法人等も含まれます。
「契約」は雇用のほか、委任、委託、嘱託等が含まれます。ただし、特定の機関との継続的なものでなければなりません。業務委託契約(請負契約)や派遣契約も該当します。
(入管法の実務)
受託した業務の半分以上を下請けに出すようであると、安定性、継続性に問題ありとして不許可になる可能性が高いです。
(名古屋地裁平成17年2月17日判決)
主としてインド料理店を実質的に経営する傍ら、調理等の業務に係ることは、「技能」の在留資格該当性がないと判示しました。
「技能」の在留資格で調理業務に従事してきたコックが、自ら店舗を経営する場合は、「経営・管理」に変更すべきです。「経営・管理」で事業を経営しつつ、調理等の現場業務を行うことは禁じられていません。
上陸審査基準省令の「技能」の下欄
申請人が次のいずれにも該当し、かつ、日本人が従事する場合における報酬と同等額以上の報酬を受けること。 |
第1号(調理師)
料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者で、次のいずれかに該当するもの。 イ 当該技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者 ロ 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定附属書七第一部A第五節1(c)の規定の適用を受ける者 |
(審査要領)
イ中国料理、フランス料理、インド料理等の調理師や「点心」、パン、デザート等の食品を製造する調理師やパティシエ等がこれに該当する。
ロ 日タイEPA附属書七第一部A第五節1(c)
① タイ料理人として5年以上の実務経験を有していること
(タイ労働省が発行するタイ料理人としての技能水準に関する証明書を取得するための要件を満たすために教育機関において教育を受けた期間を含みます)
② 初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書を取得していること
③ 日本国への入国及び一時的な滞在に係る申請を行った日の直前の1年の期間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な額の報酬を受けており、又は受けていたことがあることの各要件を満たすことを条件とします。
(注)「妥当な額の報酬」とは、日本国の当局が毎年計算するタイ国内のすべての産業における被用者の平均賃金額を超える額の報酬額又はこれに相当するもの(現金によるものに限る。)であって、タイ情報技術通信省国家統計局が公表する労働力調査において示される入手可能な最新の統計資料に基づくものをいう(審査要領)。
(ポイント)
タイ料理人の実務経験年数については、5年以上の実務経験があればよいとされています。また、当該実務経験年数には、タイ料理人としての資格証明書取得のために教育機関において教育を受けた期間も含まれます。
(入管法の実務)
【調理師に係る「技能」の実務上の審査ポイント】
ア メニュー(5,000円以上ノコースメニューが存在し、かつ単品料理が存在すること)餃子、ラーメンはあまり評価されません。単に電子レンジであたためて出す料理も論外です。
イ 座席数(30席以上あること。店の見取図が重要)等
日本で勤務するレストランの厨房や客席、外観、コース料理の写真も提出した方がよいです。インド、パキスタン料理店ではタンドール(釜)が必須です。タンドールにも種類があり、それぞれの種類の用途、機能に合致した使い方をしているか等も審査対象となることがあります。
中華料理店においては、北京ダックの焼き方にも特別の方法があり、そのような特別のやり方、使用法をしているかも審査対象となることがあります。
メニューの内容、コース料理の有無、店舗の外観、機能等に係る諸要素で、本格的な外国料理が提供されるか否か、すなわち、在留資格「技能」の在留資格該当性たる「熟練した技能を要する業務」か否か、上陸基準たる「料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する」といえるか否かが判断されます。
ウ 10年以上の実務経験の存在
在職証明書はレターヘッド付きのものとするべきです。レターヘッドが出せないレストラン等は、基本的に実務経験として認められにくいです。
屋台等は実務経験として認められません。また在職証明書にが、その在職先の住所、電話番号、在職期間等を明記してください。
在職証明書上の勤務地と海外の住民登録(中国の戸口簿等)上での居住地・住所に齟齬があれば、提出書類の信憑性を疑われます。
海外で在職していたレストランの写真(外観、客席、厨房(申請人が勤務している様子が写っている写真が望ましい)も提出すべきです。
特に中国の場合は、戸口簿、旅券、職業資格証書等で中国における職業を厳格に確認されます。例えば、調理師としての実務経験が10年以上あり、現在も調理師であるとして申請するのに、戸口簿の職業欄が農業(農民)や職工であるのは不整合であり、本来、「厨師」等となっているはずです。服務処欄の記載も本来、調理師として勤務しているのが妥当な場所の記載(「〜招待所」、「〜館」等)となっているはずです。戸口簿や旅券の記載と申請書に齟齬があれば、提出資料の信憑性に疑義があるとして不許可となる可能性があります。
実務経験の存在(在職確認)については、入国管理局が国際電話により調査をするほか、現地の日本大使館もインタビューを含め、各種調査を行います(実務経験の信憑性、在職証明書を発行した料理店の実在性等)。
インドレストランのコックが食品会社の製造コックに転職し、「技能」の更新
許可申請が認められた事例もあります。
第2号(建築技術者)
外国に特有の建築又は土木に係る技能について10年(当該技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合にあっては、5年)以上の実務経験(外国の教育機関において当該建築又は土木に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの |
(審査要領)
1 外国に特有の建築とは、例えば、ゴシック、ロマネスク、バロック方式又は中国式、韓国式等の建築、土木に関する技能等、日本にない建築、土木に関する技能をいい、枠組壁工法や輸入石材による直接貼り付け工法等も含まれます。中華街の大きな門の建築等が典型例です。
2.枠組壁工法による輸入住宅の建設に従事することを目的とする外国人技能者については、次のいずれにも該当することが必要。
①外国人技能者の受入目的が単に建設作業に従事させるためというのではなく、日本人技能者に対する指導及び技術移転を含むことが明確になっていること
②住宅建設に必要な資材(ランバー)の主たる輸入相手国の国籍を有する者又は当該国の永住資格を有する者であること
※現在、輸入住宅の原産国としては、米国、カナダが大半を占めるほか、オーストラリア、スウェーデン、フィンランドがあげられる。
③受入企業において輸入住宅の建設に係る具体的計画が明示されており、その計画の遂行に必要な滞在期間があらかじめ申告されていること
④ 外国人技能者が従事する分野としては、スーパーバイザー、フレーマー、ドライヲーラー、フィニッシュ・カーペンターのいずれかに属するものであって、日本人技能者でも作業が容易であるような工程に携わるものではないこと。
第3号(外国特有製品の製造・修理)
外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能について10年以上の実務経験、(外国の教育機関において当該製品の製造又は修理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの |
(審査要領)
・ヨーロッパ特有のガラス製品、ペルシャ絨毯等など、我が国にはない製品の製造又は修理に係る技能をいう。
・シューフィッター(生理学的分野から靴を研究し、治療靴を製造するもの)については、解剖学、外科学等の知識を用いて外反母趾等の疾病の予防矯正効果のある靴のデザインを考え、製作していく作業に従事するもの。
第4号(宝石・貴金属・毛皮加工)
宝石、貴金属又は毛皮の加工に係る技能について10年以上の実務経験、(外国の教育機関において当該製品の製造又は修理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの |
(審査要領)
・宝石及び毛皮については、宝石や毛皮を用いて製品を作る過程のみならず、原石や動物から宝石や毛皮を作る過程を含む。
(入管法の実務)
・皮の加工については毛がついている必要があり、毛皮の加工は認められますが、皮革の加工は認められません。
第5号(動物の調教)
動物の調教に係る技能について10年以上の実務経験、(外国の教育機関において当該製品の製造又は修理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの |
(審査要領)
・動物の調教等について特定の国においては教育期間中もこれに従事することが通常であることがあり、このような場合は実務経験に含まれる。
第6号(石油・地熱等掘削調査)
石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について10年以上の実務経験、(外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの |
(審査要領)
・地熱開発のための掘削とは、生産井(地熱発電に使用する蒸気を誘導するために掘削された井戸)及び還元井(発電に使用した蒸気及び熱水を地下に戻すために掘削された井戸)を掘削する作業。
第7号(航空機操縦士)
航空機の操縦に係る技能について、1,000時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法第2条第17項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り込んで操縦者としての業務に従事するもの |
(審査要領)
・機長又は副操縦士として業務に従事できる技能証明を所持する者であっても、1,000時間以上の飛行経歴を有しない者については「技能」に該当しない。
・「操縦者として業務に従事する」とは、定期運送用操縦士又は事業用操縦士のいずれかの技能証明を有し、機長又は副操縦士として業務に従事するものをいう。
・「航空運送業」とは、他人の需要に応じ航空機を使用して有償で旅客又は貨物を運送する事業をいう。
・国内線外国人操縦士(パイロット)の場合で、本邦の機関から報酬が払われず、海外のパイロット派遣元会社から支給されるものであっても。本邦の公私の機関との契約があれば、「技能」に該当する。
・航空機関士としての業務は、「技術」に該当する。
第8号(スポーツ指導者)
スポーツの指導に係る技能について3年以上の実務経験、(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの又はスポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権その他の国際的な競技会に出場したことがある者で、当該スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事するもの |
(審査要領)
・スポーツとは、運動競技及び身体運動であって、心身の健全な発達を図るためにされるものをいい、一般的に競技スポーツと生涯スポーツの2種類の概念に分けられる。
・「報酬を受けて当該スポーツに従事していた」とは、プロスポーツの競技団体に所属し、プロスポーツ選手として報酬(賞金を含む。)を受けていた者が該当する。
・「その他国際的な競技会」とは、地域又は大陸的規模の総合競技会(アジア大会等)、競技別の地域又は大陸規模の競技会(アジアカップサッカー等)が該当する。ただし、2国間又は特定国間の親善競技会等は含まない。
・アマチュアスポーツの指導に限らないが、野球、サッカーなどチームで必要とするプロスポーツの監督、コーチ等でチームと一体として出場しプロスポーツの選手に随伴して入国し在留する活動については、「興行」に該当する。
・「気功」、体操のように動くことを通じて気を動かし若しくは整え、呼吸によって気を動かし若しくは整える等により肉体的鍛錬を目的とするものと、患部の治療に当たる「気功治療」の2種類があるといわれる。
・肉体的鍛錬としての気功運動は、「生涯スポーツ」の概念に含まれると解されることから、スポーツの指導に係る「技能」に該当する。
・病気治療としての「気功治療」は。スポーツの指導には当たらない。
第9号(ワイン鑑定等)
ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)に係る技能について5年以上の実務経験((外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、次のいずれかに該当する者で、当該技能を要する業務に従事するもの イ ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」という。)において優秀な成績を収めたことがある者 ロ 国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき一名に制限されているものに限る。)に出場したことがある者 ハ ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む。)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む。)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者 |
(審査要領)
・「ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供に係る技能」
これらすべての技能を有するものであることを要し、従事しようとする業務については、それらのうちのいずれかの業務を行うものであればよい。
・ソムリエは、テイスティングのみならず、ワイン鑑定、仕入れ、保管、販売、管理等ワインに係る幅広い業務を行うものであることから、申請人と契約する本邦の公私の機関において、これらの内容の飲食関連事業を行っておるか否かを判断する。
また、小規模の事業所であってもソムリエを必要とする事業を行う事業所もあることから、事業所の規模のみをもってソムリエの技能を十分に発揮できるか否かの判断は問わない。
さらに、飲食店舗にあっては、ソムリエ以外に食器洗い、給仕、会計等の専従の従業員が確保されていることを要する。
・「国際ソムリエコンクール」に当たるものとしては、国際ソムリエ協会が主催する「世界最優秀ソムリエコンクール」があるが、それ以外のコンクールについて申請があったときは、本省に請訓すること。
・「優秀な成績を収めたことがある者」とは、国際ソムリエコンクールにおいて入賞以上の賞を獲得した者とする。