〔1993(平5)―25〕 X V 法務大臣
 
 東京地方裁判所 1993(平成5)年9月6日
 
 (平3(行ウ)254)
 
日本人の配偶者在留資格――有罪判決確定前に行われた在留期間更新の許否の判断

 原告は、パキスタン・イスラム共和国の旅券を有する外国人であり、日本人の配偶者等の在留資格をもって日本に在留しているところ、一九九〇年六月二七日強盗の被疑事実で逮捕され身柄を拘束されたまま、二件の強盗の事実で同年七月一八日および同年一〇月二二日起訴され、一九九一年七月一九日懲役三年六月の実刑判決(以下「一審判決」という。)の言渡しを受けた。東京高等裁判所は一九九二年五月二七日原告の控訴を棄却する判決を言い渡し、一審判決は同年六月一一日確定した。
 
 原告は、右一審公判中の一九九〇年一〇月一二日、在留期間更新の申請(以下「本件申請」という。)を行った。これに対し被告は、右公判の推移を見守り、一審判決が言い渡された後の一九九一年九月一七日、原告の在留期間更新を不許可とする処分(以下「本件処分」という。)を行った。

 原告は、第一に、憲法一三条、二五条、世界人権宣言一二条、一六条一項、三項、国際人権規約B規約一七条、および二三条にもとづき、〈外国人が日本人の配偶者を有し我が国において家庭を築いて生活している場合において、その外国人に対し在留の継続を許さないことは、当該外国人が憲法上および国際法上保障されている平穏な家庭生活を営む権利を侵害する行為となる〉とし、第二に〈刑事被告人は無罪の推定を受けており、有罪判決が確定するまでは、起訴された犯罪事実の存在を前提とする法的扱いを受けてはならない。本件処分時において有罪の一審判決は言い渡されてはいたが、未だそれが確定してはいなかったのであるから、被告としては更新の許否の判断において一審判決が認定した犯罪事実を考慮すべきではなかった〉と述べ、結局〈本件処分は、判断するにつき斟酌してはならない事由(有罪判決確定前の犯罪事実)を斟酌して行われたという違法があり、かつ、本来判断すべき時期に判断がされず、その結果原告に著しく苛酷で社会的妥当性を欠くに至ったものであって、右処分は裁量権の範囲を越えた違法なものとして取消しを免れない〉と主張した。

 裁判所は、原告の主張の第一点について次のように述べる。

 「『日本人の配偶者等』としての在留資格を認められた外国人についてもその在留期間……の更新については、他の在留資格で在留する外国人と同様に、被告の許可を要するものとし、その更新の許否の判断について、〔一九八九年法律第七九号による改正後の出入国管理及び難民認定〕法は、……当該外国人が日本人の配偶者であることを配慮すべきことを規定しているわけではないから、〔同〕法が、日本人の配偶者である外国人に対し、そうではない外国人とは異なって、原則として在留の継続を要求できるような法的地位を付与していないことは明らかである。また、原告の主張する国連決議や条約は、これによって日本国政府に対し、直ちに、我が国に在留する外国人の在留の継続を保障する義務を負わせるようなものではないし、憲法一三条や二五条をもって、日本人と婚姻した外国人に対し、原則として我が国での在留継続を要求できる地位を保障する趣旨を含むものとも解し難い。」

 次に裁判所は、原告の主張の第二点について次のとおり述べる。

 「被告の行う当該外国人の在留中の行状の認定は、出入国管理行政における外国人の在留期間の更新の許否に関する裁量的判断の前提として行われるものである。原告が主張する無罪推定の原則は、国の刑罰権の発動の可否が問題とされる刑事手続で採用されているものであるから、この原則が、刑事手続とはおよそ制度目的を異にする出入国管理行政に直ちに適用されると解することは困難である。そして、有罪判決確定前に行われた在留期間更新の許否の判断に際しては、その更新を申請する外国人の行状を判断するにつき、刑事手続における起訴事実や判決が認定した罪となるべき事実及び情状に関する事実は、判決が確定していなくても、判断の重要な資料となるのは当然であり、刑事手続における無罪推定の原則が、在留期間更新許否の判断においてこのような事実を考慮されないという原則まで含むとする根拠はないから、この点に関する原告の主張は失当である。」

 そして裁判所は、「刑事訴追を受けている外国人から在留期間更新の申請があった場合に、起訴された犯罪事実を含めた当該外国人の行状について、被告が独自に事実関係の調査をしたうえで許否の判断をするか、起訴事実に関する裁判所の判断を資料とすることとし、そのために裁判所の判断が出るまで許否の判断を保留するかという点についても、被告の裁量に任されているというべきである。原告が起訴された強盗の罪は法定刑が五年以上とされる悪質な犯罪であり、……その罪が認められるか否かに関する裁判所の判断は、当該外国人の我が国における在留継続の許否の判断について重要なものであることはいうまでもない。したがって、被告が、一審判決があるまで、一一月余本件申請に対する判断を保留したからといって、本件処分に裁量権の逸脱、濫用があるとすることはできない」と述べ、本件処分は適法であるとして、原告の請求を棄却した。なお本件は控訴された。
 
(判タ八六四号二〇九頁)

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