出入国管理令違反幇助、同教唆被告事件
昭和47年(う)第998号
控訴人:被告人A・B
東京高等裁判所第10刑事部
昭和48年4月26日

判決
主 文
原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。
被告人Aを懲役六月に処する。
但し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
被告人Bの本件控訴を棄却する。
原審における訴訟費用中、証人C、同D、同Eに支給した分を被告人Aの負担とし、証人F、同G、同H、同I、同J、同K、同L、同M、同N(昭和四五年四月二二日の公判期日の分)に支給した分を除きその余の分を被告人両名の連帯負担とする。
理 由
本件各控訴の趣意は被告人両名の弁護人田代博之、同亀井時子、同柴田憲一共同名義の控訴趣意書に、これに対する答弁は検察官太田輝義名義の答弁書に、それぞれ記載してあるとおりであるから、いずれもこれを引用する。
一、控訴趣意第一点について
所論は、原裁判所が証拠として採用したOの検察官に対する供述調書は原審において検察官が、Oは国外にいるため公判期日において供述することができないとの理由で証拠調を請求したものであり、原裁判所がOの公判廷への出頭の可能性の有無について配慮せず、国外に在るということだけで安易にその証拠能力を認め証拠とし採用したことは訴訟手続の法令に違反したものであると主張する。刑訴法三二一条一項二号による検察官の面前における供述を録取した調書の証拠能力を認める条件としての「供述者が国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」とは、供述者が国外いるときはそれだけで条件を充たす意味でないことは所論のとおりであり、記録上見られる、Oの検察官に対する供述調書の証拠決定に至つた経過よりすれば、原裁判所がOの公判廷へ出頭する可能性の有無につき無配慮であつたと断ずることができないが、仮りにそうであつたとしても、当審において弁護人の要望によつて行つた、ソウル特別市大韓民国中央情報部気付、O証人召喚状の送達嘱託に対し、在大韓民国後宮大使より昭和四八年二月二日付外務大臣宛送付された一九七三年一月二六日付ソウル外務部口上書写によれば、Oが弁護人指示の大韓民国中央情報部に勤務したことなく、従つてその所在は不明で召喚状の送達は不能であることを伝えており、原裁判所が同様の措置を採つたとしても同一結果になつたと認められ、現実の状況のもとで他にOの所在を確かめる有効な手段は考えられないので、所論の訴訟手続の法令違反があつても判決に影響を及ぼさず、所論は理由がない。
二、控訴趣意第二点について
所論は、原判決の認定した事実は判決に影響を及ぼすことの明らかな誤認に基くものであると主張するが、原判決の掲げる証拠を総合判断すれば、被告人らの全面的否認にも拘らず、原判示事実を十分認定することができる。所論は認定証拠の主体となるOの検察官に対する供述内容は政治的謀略による虚偽架空のものであつて全く措信できないというが、所論の理由かないことは、原判決が照応する裏付証拠を挙示しながら詳細に説示するとおりであつて、右供述の信憑性を否定すべき証拠はない。所論はまた、原判決が証拠を示さずに被告人らの行動を組織的計画的と認定し、そのことから実体の不明な密出国に用いる船が、Oの乗船予定地秋田県男鹿市戸賀海岸に廻航されてくる可能性を認めたことを指摘して誤認であるというが、Oが名古屋市のP方より東京都を経て男鹿市戸賀海岸まで赴き、二夜廻航船の出現を待機したうえ、結局目的を遂げずに東京都に立戻り、同都内を転々した数日間に、次々と不詳の男が現れて前者より引継ぎを受けてはOを指示誘導しているのであつて、被告人らを含めそれらの者は、相互に関連なく偶然出会つたものとは認められず、背後に働く組織の力により計画されたところ指令されて行動していたと推認し得るのである。それらの一連の行動がOを密出国させるために乗船させる目的であつたことが明らかであるから、現実には出現しなかつたものの、船の廻航が計画、手配されていて乗船の可能性があつたと推認することも不合理ではない。関係証拠によれば原判示戸賀海岸の風引岩附近から、殊に深夜、乗船することが不可能ではないが、容易でないことを認め得るが、もともと乗船の目的が厳禁されている密出国にあるのであるから、秘密を保つ必要上、深夜困難を冒しても通常乗船に用いられない場所を敢えて選ぶことは十分考え得ることである。原判決の認定に、判決に影響を及ぼす誤認があるとは認められない。所論は理由がない。
三、控訴趣意第三点について
所論は、出入国管理令七一条は密出国行為のみならず、密出国企図行為をも処罰の対象としているが、企図罪は密出国の基本的構成要件に該当する犯罪実行々為に着手する以前の準備行為を全て含み、その行為に定型性がなく、無数の態様があり得るから、処罰の対象が無限に拡大されて著しく法的安定性を害するするうえ、刑法の規定する他の予備罪の法定刑が既遂、未遂の場合より軽いのに、密出国罪の既遂と同じ刑をもつて処罰し、他の予備罪との均衡を欠き罪刑法定主義に立つ憲法三一条の精神に違背し、違憲の疑いが強いと論ずる。出入国管理令はその第一条が宣明するとおり、本邦の出入国について公正な管理をすることを目的とするものであり、それが国家の秩序を保持する上に必須であることは論を俟たない。右目的よりすれば密出国の実行々為着手の前段階において規制することも公共の福祉に適うというべきである。密出国罪はその採られる手段によつて犯行の態様が多様であり、これを企てる行為の定型も幅広いものとなるが、このことは他の予備罪の犯行についても同様であり、基本の罪の性質により程度があるに過ぎない。また密出国企図罪が密出国罪と法定刑を同じくし、他の予備罪の場合と異ることは所論のとおりであるが、企図罪と雖も、内心に企図を懐いたのみで処罰されるものではなく、具体的な外部行動からその企図を認定し得る段階に達したときに初めて処罰の対象となることはいうまでもない。そしてその場合密出国の目的に向つて次第に進展する一連の行動経過において密出国の実行々為接着にした段階に在るといい得
るから、処罰について同一法定刑の範囲内において具体的事案に応じた量刑に委ねる規制もあり得ることである。立法論として当否の批判は兎も角、そのために罪刑法定主義に違反し違憲であるとする所論は当らない。
所論は次いで、出入国管理令七一条が合憲としても、刑法六一条一項、六二条一項の教唆、幇助犯の規定は正犯の実行々為の着手を前提として適用されるものであるから、正犯が実行着手前の予備行為に止る場合、右各法条の適用はないと論ずる。密出国企図罪は密出国罪に対しその予備的行為ではあるが、それとして構成要件を備えた独立の犯罪であるから、企図行為の実行着手ありと認められる場合、その教唆、幇助犯の規定の適用を否定する理由はない。所論は更に、教唆、幇助犯の規定は基本的構成要件的行為(実行々為)着手前の予備的行為(企図行為)が独立して処罰される場合であつても、予備罪の教唆幇助行為について特に処罰する規定がない以上、適用はないから原判決が密出国企図罪の教唆罪、幇助罪の成立を認めたことは法令の解釈適用を誤つたものであると主張する。しかし刑法六一条、六二条はいうまでもなく刑法総則規定であり、同法八条によれば、特に刑法総則規定の適用を除外していない出入国管理令の規定する密出国企図罪に適用されるべきことはむしろ当然である。刑法自身が六四条により適用を除外する場合に当らない本件において原判決が密出国企図罪の教唆罪、幇助罪の成立を認めたことに、法令の解釈適用を誤つた違法はなく、所論は理由がない。
四、控訴趣意第四点について
所論の要旨は、原判決の量刑につき、被告人Aに対し懲役六月の実刑を言渡した点を不当に重過ぎると主張するものである。記録によれば、被告人らは本件各自の犯行を全面的に否認し、犯行の動機を明らかにすることができないが、被告人らに教唆、幇助されて密出国を企てたOは懲役八月、二年間刑の執行猶予の判決を受け既に韓国に送還されていることが認められ、被告人Aに前料、非行前歴の見られないこと、幼児を擁した家庭事情等を考慮すれば、同被告人に対する本件による処断としては、今後を戒めて刑の執行を猶予することにより処刑の目的を達し得るものと認められるので、その意味において原判決を破棄すべく、所論は理由がある。以上のとおり被告人Bの本件控訴はその理由がないので刑訴法三九六条によりこれを棄却すべく、被告人Aの本件控訴は理由があるので同法三九七条一項、三八一条により原判決中被告人Aに関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書に従つて更に自判する。
原判決が適法に確定した罪となるべき事実第一に原判示のとおり法令を適用し、刑の選択をした刑期の範囲内において被告人Aを懲役六月に処し、刑法二五条一項によりこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。原審における訴訟費用の負担については刑訴法一八一条一項本文、一八二条を適用して、主文のとおり判決する。
弁護人田代博之外二名の控訴趣意
第一点 原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある̶̶採証法則違反。原判決は検察官提出のOの検察官に対する供述調書の証拠能力を認めて証拠として採用し、被告人らを有罪と判定する重要な証拠としている。
しかし、右供述調書は刑事訴訟法第三二一条一項二号の要件を欠き、証拠能力を有しないものである。原審検察官は右供述調書を供述者が国外にいるため公判期日において供述することができないときにあると提出し、原裁判所はそれをそのまま認めたのである。しかし、Oが単に国外にいるからとの理由だけでその供述調書に証拠能力を認めたのは違法である。憲法三七条二項はすべての証人に対する被告人の十分な審問権を保障し、自己の為の証人強制喚問請求権を保障しているのである。右規定が被告人に十分な審問の機会が与えられなかつた伝聞でも絶対に証拠にすることが許されないものでないこと(最高裁昭二三・七・一九判決、集二・八・九五二)、であるとしても被告人から請求があれば可能な限りその機会が与えられるのに与えなかつた証人の供述は証拠能力がないことを定めたものであつて、原則として伝聞証拠を排斥し直接証拠主義をとることを定めたものというべきである。しかるに、原裁判所はOが単に国外にいるというだけの理由で何らその状況を顧慮せず安易に証拠能力を認容している。
しかし、本件起訴事実の罪体に関して本事件の正犯といわれるOの供述は極めて重要である。O自身の外国人登録法違反、出入国管理令違反被告事件においても殆どOの供述のみで昭和四三年一〇月二一日懲役八月、執行猶予二年の判決をうけている。
Oの逮捕状況、弁護人選任の経過、刑事裁判手続の進行等、Oの動きは疑惑につつまれていたが、判決以後の行動だけから考慮しても特異な手続経過をふんでおり、故意に証人として法廷に立つことから逃避し、被告人の反対尋問権の行使を不可能ならしめており、その背景の複雑さを推測させている。
Oは判決の翌日昭和四三年一〇月二二日に東京入国管理事務所に任意出頭し、密入国容疑で違反調査をうけ、審査二課の調査で口頭審理以後の調査手続を放棄し、即時退去強制令書の告知をうけ、翌一〇月二三日、羽田から自己の費用による出国という形で帰国した。
しかし、このようなOに対する東京入管の取扱いは異例の措置である。通常、密入国者で住所不定、身柄引請人もいない場合、判決言渡日には入管の警備官数人が法廷に待機して執行猶予の言渡後直ちに収容令書を執行し手錠つきで入管収容所へ収容している。その時点から違反調査を開始、六〇日以内に退去強制令書を発付告知して長崎県大村市の大村入国者収容所に移送収容して一年に一、二回来る韓国への強制送還船で送還するという手続がとられている。この間、身柄は何ケ月も収容されたままであり、Oのように住所不定、身柄引請人もないまま、釈放されたという事例は正に異例としかいいようがない。自費出国の手続も韓国大使館が身分証明書を発行しただけで金をもつていないというOが大使館から飛行機の切符を買つてもらい大あわてで帰国しているのである。帰国後のラジオ、新聞への登場、おじのPあての中央情報部にオートバイを買つて送つてくれとの手紙等、帰国後の行動も不思議である。
緒方検事も執行猶予判決をうけてその確定もまたずにその二日後に国外に帰国することは異例であるが入管の管轄下であるから検事はどうしようもないと述べているようにすべての情況が通常とは異なる形で進行してきたのである。
既にQが逮捕され、他の数人にも逮捕状が用意されているという捜査側の言により弁護人は本件被告事件の重要証人としてOを確保する必要性からOの刑事裁判中からOの身柄を日本に確保してほしい旨何回も検察庁に申入れてきた。通常の手続移行ならば本事件の証人として出廷しうる余地は十分あつたのである。にも拘らずOがあわてて帰国し、それを韓国大使館が多大な便宜をはかつて推進してきたこと等から考慮することさらにOは本件被告事件の裁判に証人として出頭し、反対尋問にあい事案の真相が明らかにされることから逃れるための工作だつたのではないかと強い疑問をいだかざるを得ない。そして、これを仕組んだ裏には韓国特務情報部CIAがひかえていたと考えざるを得ない。
被告人の反対尋問権の行使を不可能ならしめるような状況をO自らがつくり出しているのである。
このような情況において単に国外にいるとの理由だけで、Oの供述録取書を直ちに証拠として採用することは手続的正義に反し許されるべきではない。
検察官はOが既に韓国に帰国していることを理由として「国外にいるため公判期日において供述することができない」として供述録取書の取調を主張し原裁判所はそれを認めた。しかし、Oが国外にいるとしても、「国外にいること」がすべてそのままこの条件に合致するものではない。本条の供述不可能の場合の事例を広く解釈すると、憲法の保障する被告人の証人尋問権を不当に侵害、奪うことになり、かなり厳格に解釈されていることは判例、学説の認めるところである。「精神、身体の故障」についてもかなり厳格に解されており、「所在不明」についても捜査通常の過程において相当の手段を尽くし、なおその所在が判明しない場合をいうとされており、死亡の場合に準ずるほどのものと解釈されている。
したがつて、「国外にいる」という要件も国外にいれば必ず、これに該当するというものではなく「死亡」に比肩すべきほどの、国外にいるため、裁判所への出頭が絶対不可能だという程度のものと解する。現在、Oの居住するというソウルと東京は各航空会社の飛行機が毎日、何便も往復しており飛行所要時間約一時間半、費用約三万円で往けるのである。同じ日本国内の沖縄県へ飛ぶより所要時間、費用ともずつと少ないのである。しかも、本件事件が前述したように正犯といわれるOを中心に奇々怪々の進展のもとに殆どO一人の供述のもとになりたつているのである。
原裁判所はOの法廷への出頭の可能性の有無について何ら配慮もやらず安易にその供述書を証拠としている。しかし、以上のような状況においてその証人の重要件、外国の遠近等、裁判所は慎重に考慮すべきではなかつたのか。
したがつて、Oの供述調査は証拠能力を欠き、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある。
第三点 原判決は、法令の適用に誤りがあり、その誤りが判決に影響を及ぼすこと明らかであるから破棄さるべきである。
一、原判決は、密出国企図罪にいて、密出国そのものの実行着手の有無を問わず、これに対する教唆もしくは幇助行為については、刑法総則どおりそれぞれ教唆犯、幇助犯の成立を論ずるべきもので、これを否定すべき理由はない旨判示し、被告人Aにつき刑法第六一条第一項、被告人Bにつき刑法第六二条第一項をそれぞれ適用して、教唆犯、幇助犯の成立を認めた。しかし、右判示は、明らかに刑法第六一条一項、第六二条第一項の規定の解釈適用を誤つたものである。
二、現行出入国管理令は、連合軍占領下に、アメリカの移民法を基にして占領軍の指導のもとに制定された法令であり、反共治安法色の極めて強い法令である。その一つの特徴として、出入国管理令第七一条が、密出国行為のみならず密出国企図行為をも処罰の対象としている。「企図罪」なるものは、その基本的構成要件に該当する犯罪実行行為に着手する以前の犯罪準備行為を全て含むものであり、その行為に定型性がなく、企図罪の行為は無定型、無限定な行為であり、その態様も種々、雑多であつて、治安的観点から取締、処罰にとつては非常に便利な規定ではあつても、その運用いかんによつては、処罰の対象が限りなく拡大され、人権が侵害される危険があり、著しく法的安定性を害するものである。もともと、刑法上、犯罪の実行行為着手前の予備的段階にある行為は、一般的に、具体的な法益侵害を生じしめる蓋然性は極めて少なく、その危険性も少ないがために、通常可罰性なしとされ、特にその法益が国家的、社会的に高いとされる特殊な犯罪に限つて例外的にこれを処罰の対象としているにすぎない(内乱予備、殺人予備等)。この刑法上の原則からすれば、その法益がさほど高いと評価することのできない単なる出入国に関する行政手続違反にすぎない密出国行為に対して、出入国管理令第七一条がその反共治安的観点から本来の犯罪行為のみならず、その準備段階にある予備的行為まで広く処罰の対象とし、しかも、刑法上処罰の対象とされる他の予備罪(内乱予備、殺人予備等)の法定刑が既逐、未遂の場合に比して極めて軽いのに、密出国企図の場合にもその既遂の場合と同じ法定刑をもつて処罰せんとするのは極めて特異な立法であり、他の犯罪の予備段階にある行為との均衡を著しく欠くものであつて近代刑法の大原則である罪刑法定主義、反共治安立法を許さない憲法第三一条の精神に違背する疑いの強いものである。
三、仮に出入国管理令第七一条の合憲的解釈が可能であるとしても、その密出国企図罪についての教唆犯、幇助の成否については、刑法総則の解釈は厳格に、しかも抑制的になされなければならない。
刑法第六一条第一項が「人を教唆して犯罪を実行せしめたる者」を教唆犯とし、第六二条一項が「正犯を幇助したる者」を従犯とする趣旨は、正犯をして構成要件的行為の実行に着手せしめたる者(教唆犯)、正犯の構成要件的行為の実行を幇助したる者(幇助犯)を意味し、正犯の実行行為を前提にその教唆犯、幇助犯の成立を論ずべきものと解すべきであり、正犯がその実行行為着手前の予備行為に止まる場合は、刑法第六一条第一項、第六二条第一項の適用はないものと解すべきである。予備……企行行為は、前述したとおり、無定型、無限定な行為であり、その処罰の範囲が著しく拡張されるものであり、教唆犯、幇助犯の行為態様もまた無定型、無限定であつてもし、予備段階にある企行行為一般につき刑法第六一条第一項、第六二条第一項を適用して企図罪の教唆犯、幇助犯の成立を認めるとすると、さらに著しく処罰の対象が拡大される危険が大であり、著しく法的安定性を欠く結果を生じるからである。
四、仮に、密出国企図罪も一つの犯罪構成要件であり、その企図行為も実行行為であつてその教唆、幇助行為がありうると解されるとしても、わが刑法は企図罪(特に予備行為にとどまる場合)を処罰の対象としてはいない。刑法は、前述したとおり、予備的行為を処罰の対象とする場合は、明文を設けて処罰の対象としているのと同様に、予備的行為の共犯(教唆、幇助犯)を処罰する場合も明文を設けて処罰の対象とすることを明確にしているのである。例えば、刑法第七八条は、内乱罪の予備罪について特に明文を設けて処罰の対象とすることを明らかにするとともに、同第七九条で、特に、内乱予備罪の幇助行為までも処罰の対象とすることを明定している(爆発物取締罰則第五条も同様の趣旨である)。
五、以上のとおり、いずれにしても、刑法総則の共犯に関する規定(刑法第六一条、六二条)は、基本的構成要件的行為(実行行為)着手前の予備的行為(企図行為)が独立して処罰される場合であつても、当然にその適用はなく、予備罪(企図罪)の教唆行為、幇助行為について特にこれを処罰する法律の規定なき以上処罰の対象とはならないのであるから、原判決の判示するところによつて、いまだ密出国行為そのものの実行の着手前の予備的行為にとどまる被告人らの各行為につき、密出国企図の教唆罪、同幇助罪の成立を認めた原判決は、法律の解釈適用を誤つた違法である。

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