在留期間更新不許可処分取消請求事件
平成6年(行ウ)第344号
原告:A、被告:法務大臣
東京地方裁判所民事第3部(裁判官:佐藤久夫・橋詰均・徳岡治)
平成7年10月11日
判決
主 文
一 被告が平成六年一〇月二四日付けで原告に対してした在留期間の更新を許可しない旨の処分を
取り消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文と同旨
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、昭和三三年一月五日、タイ王国バンコック市で出生したタイ国籍を有する女性であ
るが、昭和五八年八月九日、日本人のB(以下「B」という。)と婚姻し、同年九月一六日、出入
国管理及び難民認定法(平成元年法律第七九号による改正前のもの。なお、その改正後の同法
を単に「法」という。)四条一項一六号、同法施行規則(平成二年法務省令第一五号による改正
前のもの。)二条一号所定の在留資格(日本人の配偶者又は子)で一年の在留期間を許可され、
わが国に入国した。
2 その後、原告は、昭和五九年九月八日に一年の、昭和六〇年九月六日及び昭和六三年九月九
日にいずれも三年の在留期間の更新許可を受け、平成三年八月二九日、法二条の二及び別表第
二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格に該当する者として在留期間を三年とする在留期間
の更新許可を受けた。
3 原告は、平成六年七月二五日、在留期間の更新許可申請をしたが、被告は、原告がBと長期間
同居していないこと等を理由に「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がない」
として、同年一〇月二四日付けでこれを不許可とする処分(以下「本件処分」という。)をした。
4 確かに、原告は、Bの経営する会社が経営危機に陥ったことから、債権者の追及を免れるた
め、昭和六二年一月、Bに言われるままBと別居し、本件処分当時も同居していなかったが、原
告としては、やがてBと一緒に暮らせることを考え、Bと連絡を取り合っていたものであり、
法律上も、Bの配偶者の身分を有することに変りはないのであって、本件処分は、何ら合理的
な理由が存せず、被告に許された裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであ
る。
よって、原告は、本件処分の取消しを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1ないし3の事実は認める。
2 同4のうち、原告が昭和六二年一月Bと別居し、本件処分当時も同居していなかったことは
認めるが、その余は争う。
三 被告の主張
1 在留期間の更新は、「現に有する在留資格を変更することなく」行われるものであるから
(法二一条一項)、その更新申請においては、少なくとも当該外国人が、現に有する在留資格
を付与されるための最低限の条件を満たすこと、すなわち当該在留資格に対応する活動に該
当する活動を引き続き行うものであると認められることが必要である。
 ところで、日本人と婚姻した外国人の場合、「日本人の配偶者等」の在留資格に該当するた
めには、単に日本人との間に法的に有効な婚姻関係が存在するだけでは足りず、それに加え
て、日本人の配偶者の身分を有する者としての活動(以下「日本人の配偶者としての活動」と
いう。)を行う者であることが必要である。そして、ここに日本人の配偶者としての活動とは、
配偶者の身分を有する者が行うあらゆる活動を意味するのではなく、社会通念上婚姻関係に
ある配偶者が行うものとされている典型的な活動、すなわち、夫婦として同居・協力・扶助
する活動(民法七五二条)を安定的かつ継続的に行うことをいうものと解すべきである。
したがって、日本人の配偶者である外国人であっても、その婚姻関係が破綻し既に形骸化
している場合には、当該外国人は、日本人の配偶者としての活動を行う者ということはでき
ず、そのような者は、婚姻生活とは別の活動を目的としてわが国に在留する者であり、「日本
人の配偶者等」以外の、その在留の目的に適した在留資格によって在留すべきである。
 原告とBは、昭和六二年一月から長期にわたって別居しており、昭和六三年三月ころ以降
はBから原告に生活費が支払われたこともなく、Bも平成五年の時点で他の女性と同居して
いるのであって、その間、婚姻当事者間において、婚姻関係の修復を目的とする何らかの真
摯な努力が払われてきた事実もなかったことからすれば、原告とBとの婚姻関係は、本件処
分時において破綻し既に形骸化していたことが明らかである。
したがって、原告は、本件処分時において、日本人の配偶者としての活動を行う者とは認
められず、「日本人の配偶者等」の在留資格に該当する要件を欠いていたから、その在留資格
での在留期間の更新を許可する余地がなかったものである。
2 また、外国人の在留期間の更新の許否は、国益保持の見地に立って、申請理由の当否のみ
ならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢
など諸般の事情を考慮して判断されるべきであり、このような判断は、事柄の性質上、国内
外の情勢に通暁し、出入国管理行政の責任を負う被告の広汎な裁量に委ねられていると解す
べきであるから、在留期間の更新を不許可とした被告の処分が違法となるのは、その判断が
全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限られ
るというべきである。
 本件において、被告は、①前記のとおり、原告がBと長期にわたって別居し、その間、婚姻
を修復するための真摯な努力もされておらず、本件処分時において、原告にはBと夫婦共同
生活を営もうという意思がなかったと推認され、原告とBの婚姻関係は、破綻し既に形骸化
していたものというべきであるから、このような原告について、「日本人の配偶者等」の在留
資格での在留期間の更新を認める必要性は乏しいこと、②原告は、Bと別居中であった平成
三年八月にした在留期間の更新許可申請の際、Bと同居しているかのごとく装って申請書を
提出し更新許可を得ており、このような原告の行為は、出入国管理秩序を無視する悪質なも
のであって、わが国に在留するための手段として日本人配偶者との婚姻関係を利用しようと
するものであること、③「日本人の配偶者等」の在留資格が人為的に形成される身分関係で
あることから、最近では、わが国での就労活動を目的とする外国人が、この在留資格を隠れ
蓑として悪用する例が後を絶たない状態にあり、このような状況下において、日本人と法律
上の婚姻関係にはあるが夫婦共同生活を営む実体を欠いている外国人についてまで、「日本
人の配偶者等」の在留資格による在留継続を認めるとすれば、偽装婚姻や、婚姻関係の破綻
後もわが国での就労活動のために法律上の婚姻関係を継続するという事案を大量に誘発し、
ひいては出入国管理秩序の破壊、労働市場の侵害等の不都合をもたらすこと、といった諸事
情を勘案して、在留期間の更新を許可しなかったものであって、本件処分には、社会情勢や
出入国管理行政の観点から十分な合理性が認められ、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用
した違法はない。 
3 以上のとおり、原告の「日本人の配偶者等」の在留資格による在留期間の更新については、こ
れを適当と認めるに足りる相当の理由があるとはいえないから、右更新を不許可とした本件処
分は適法である。
四 被告の主張に対する原告の認否及び反論
1 被告の主張1は争う。
「日本人の配偶者等」の在留資格該当性が認められるためには、当該外国人と日本人との間に
法的に有効な婚姻関係が存在することで十分であり、法はそれ以上のものを要求していない。
したがって、日本人との婚姻関係が破綻している外国人であっても、適式の離婚手続によって
婚姻関係が解消されない限り、日本人の配偶者としての身分を有するのであるから、「日本人の
配偶者等」という在留資格に該当する要件に欠けるものではないのである。
そうすると、原告が「日本人の配偶者等」の在留資格に該当する要件を欠いているとして、在
留期間の更新を許可する余地がなかったと判断するのは誤りである。
2 同2は争う。
原告は、Bと別居してからも、同人との実質的な婚姻関係の復活を願って同人に対し同居し
てくれるよう働きかけを続けてきたのであって、わが国で就労することを専らの目的としてB
との婚姻関係を利用しようとしている者ではない。
したがって、在留期間の更新の許否が被告の裁量判断に委ねられているとしても、原告の右
のような事情を全く考慮しないで、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がない
とした被告の判断は事実の基礎を欠き、社会通念上著しく妥当性を欠くものであり、本件処分
は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。
3 同3は争う。
第三 証拠関係
本件記録中の書証目録、証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。
理 由
一 請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。
被告は、原告とBの婚姻関係が破綻し形骸化しているとして、「日本人の配偶者等」の在留資格
による在留期間の更新を許可する余地がなく、あるいはその更新を認める必要性が乏しい旨主張
するので、まず原告とBの婚姻関係の推移等についてみるに、前記争いのない事実と成立に争い
のない甲第五号証、第六号証の一、二、乙第一号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第三号証、
原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
1 原告は、以前わが国に在留していた際にBと知合い、昭和五八年七月、タイの原告の両親の
許を訪れたBから求婚され、同年八月九日婚姻し、同年九月一六日来日した。
来日後、原告は、Bが住んでいた横浜市緑区内のCマンションでBとの結婚生活を送ること
となったが、当時、Bは、株式会社Dという従業員七〇名ほどの規模の運送会社を経営し、原告
に毎月六〇万円程度の生活費を渡しており、原告は近所のスポーツクラブに通うなど、その夫
婦生活は経済的にも余裕のある順調なもので、原告が収入を得るために稼働するという状況で
はなかった。
2 ところが、結婚後三年余りを経過した昭和六一年暮れころから、Bは、会社の経営が思わし
くなくなり、多額の借金を抱えて債権者から逃げ隠れするような事態となり、それまで住んで
いたCマンションもいずれ売却しなければならず、また、債権者等の嫌がらせや追及を免れる
必要もあったことから、原告は、昭和六二年一月、当分は夫婦が別々に暮らした方がよいとの
Bの勧めに従い、やむなく、目黒区内のEコーポ三〇一号室に単身転居し、Bも債権者等の追
及を免れるため、原告には電話番号だけ教え、住所を明らかにしないままCマンションを出た
(原告が昭和六二年一月にBと別居したことは当事者間に争いがない。)。
その後、原告は、後記のとおりBから月々の生活費の支払がなくなったことから、平成元年
二月、家賃のより安い目黒区内のメゾンFに転居し、さらに平成三年六月には、家賃の負担軽
減するために、友人と共同で部屋を借りて生活することとし、目黒区内のロイヤルビル・Gに
転居したが、その友人が結婚したため、平成五年四月、現住所であるリベラHに転居するに至
った。なお、原告は、右各転居について、その都度Bに相談しており、Bも了解していたもので
ある。
3 Bは、別居後、Eコーポの原告の居室へはたびたび訪れていたが、原告がメゾンFに転居し
た後はその居室を訪れることも極めて少なくなり、原告が友人との二人住まいをしていたロイ
ヤルビル・Gの居室には一度も訪れたことはなかった。しかし、この間、原告とBは、月数回は
電話で連絡を取り合っていたし、平成四年七、八月ころまでは二人で会ってもいたものである。
4 Bは、別居後も、概ね月一〇万円から二〇万円の生活費を原告に渡していたが、昭和六三年
三月ころからは生活費を渡さなくなり、ただ平成四年ころまでは原告の求めに応じてその都度
二、三万円ないし一〇万円を渡すということが続いていた。
原告は、自らも生活費を稼ぐ必要から、昭和六二年五月以降、I株式会社で通訳として働く
ようになったが、その後、インテリア関係の勉強を行うため、平成元年四月J学園に入学し、平
成四年三月ここを卒業した後、平成四年七月から、輸入雑貨を取り扱うK株式会社に就職し、
現在に至っている。なお、原告は、右J学園に在学中は、主としてタイの親からの送金で生計を
維持していたものである。
5 原告は、Bとの別居後、たびたびBに対して一緒に生活してくれるよう求めていたが、Bは、
まだ会社の建直しができていないとして応じようとせず、平成四年七、八月ころに会った際も、
一緒に暮らすことを希望する原告に対し、多額の借金があるからあと四、五年待ってくれと述
べ、その後も、原告からBに電話して連絡しあうという状況が続いていた。
平成五年ころ、原告がBに電話をした際に女性が応答したことから、原告は、Bが女性と同
居しているのではないかと疑い、その女性についてBに尋ねたところ、Bは、彼女とは仕事の
関係だけであるとか、彼女にも夫や子供がいるから大丈夫だなどと言い訳し、いずれは原告と
同居するつもりであるとの感じを抱かせる対応をしていた。
6 ところが、Bは、その後しばらくして、原告が電話をしても、まともな応答をしないようにな
り、同居のことも言わなくなった。このような状況のもとで、原告は、平成六年七月、在留期間
の更新時期を迎え、Bに身元保証人になってもらいたい旨求めたところ、Bは、今は収入、資産
がないから保証人になれないという理由でこれに応じなかったため、原告は、父の知人である
L大学医学部のM教授に依頼して身元保証人になってもらい、在留期間の更新許可申請をした
が、同年一〇月二四日付けでこれを不許可とする本件処分がされた(本件処分当時、原告とB
が別居していたことは当事者間に争いがない。)。
7 原告は、その後も、Bに自分の許へ戻ってきてほしいという気持を持っていたが、やがてB
と一緒に暮らしている女性が株式会社DでBの秘書をしていた女性であることが判明し、B
がどうしても原告の許に戻らないというのであれば、きちんとした手続で解決したいと考え、
本件処分後の平成七年三月、弁護士に依頼して、東京家庭裁判所八王子支部に、Bとの離婚と
五〇〇万円の財産分与等を求める調停を申し立てた。しかし、原告としては、現在もなお、Bさ
えその気になればもう一度一緒に暮らしたいと考えているが、Bがどのように考えているかは
明らかでない。
二 右認定したとおり、原告とBは、本件処分時までに約八年間別居状態が続いてはいるものの、
右別居の発端は、Bの会社の経営不振に伴い、債権者からの追及を免れるためにとられた措置で
あり、しかも、平成四年ころまでは、二人で会ったり、電話で連絡したりしていたもので、その関
係が特に不仲になったというわけではなかったこと、その別居期間中、原告はたびたびBに対し
一緒に生活してくれるよう求めたが、会社の再建がまだであるとか、あと四、五年待ってくれと
いわれていたこと、平成五年ころ以降、Bは、他の女性と関係を持つようになり、原告とも会う
ことがなくなったが、電話では連絡を取り合っており、女性関係についても言い訳するなど、原
告との関係を否定しようとはしていなかったこと、Bが原告と同居する意思を示さなくなったの
は、その後しばらくしてからであり、本件処分の一年程前からであること、本件処分当時、原告と
しては、なおBとの婚姻関係を維持、継続する意思を有していたものであり、Bも、必ずしも原
告との婚姻生活の継続を積極的に否定する言動はとっていないことなど、本件に現れた別居の動
機、その後の経緯、両者の関係が疎遠になってからの期間、原告の婚姻継続の意思の程度を総合
考慮すると、原告とBの婚姻関係は、本件処分当時、Bの女性関係の故に破綻に瀕していたとい
うことはできるが、必ずしも、将来、夫婦共同生活をやり直す可能性が全くないなど、その婚姻関
係が未だ完全に回復し難い程に破綻してその実体を失い既に形骸化していたということができな
いことは明らかである(なお、原告は、本件処分後の平成七年三月に、Bとの離婚を求める調停申
立てをしているが、これは、前記認定のとおり、本件処分後に、Bが秘書であった女性と一緒に生
活していることが判明し、Bが原告との同居にどうしても応じないというのであれば、きちんと
処理したいという趣旨で申し立てたものであり、右調停の申立てをもって、本件処分当時、原告
にBとの婚姻関係を維持、継続する意思がなかったと速断することはできない。)。
三 そこで、本件処分の適否について判断するに、在留期間の更新許可は、わが国に在留している
外国人の申請により、現に有する在留資格を変更することなく、従前許可された在留期間に引き
続きさらに一定期間適法にわが国に在留できる法律上の地位を付与する処分であり、したがっ
て、その許可は、当該外国人が現に有する在留資格に属する活動を引き続き行おうとする場合、
すなわち、当該外国人が更新時において有する在留資格に該当する要件を充足していることを当
然の前提としているものであって、その要件を欠く者からの更新の申請はこれを認める余地がな
いことはいうまでもないから、まず、原告が本件処分当時において「日本人の配偶者等」を在留資
格に該当する要件を充足していたかどうかについて検討することとする。
1 本邦に在留する外国人の在留資格は、法別表第一又は別表第二の上欄に掲げられているとお
りであり、別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者は本邦において同表の下欄に掲げる
活動を行うことができ、別表第二の上欄の在留資格をもって在留する者は本邦において同表の
下欄に掲げる身分若しくは地位を有する者としての活動を行うことができるとされ(法二条の
二第二項)、また、上陸審査においても、入国審査官は、当該外国人の申請に係る本邦において
行おうとする活動が別表第一の下欄に掲げる活動又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地
位を有する者としての活動のいずれかに該当することを審査すべきものとされている(法七条
一項二号)ことなどからすると、法は、個々の外国人がわが国で行おうとする活動内容に着目
して、一定の在留活動を行おうとする者に対してのみ、その活動内容に応じた在留資格を与え
て、その入国及び在留を認めることとしているものということができるから、日本人と婚姻し
た外国人が「日本人の配偶者等」の在留資格によってわが国に在留するためには、当該外国人
がわが国において行おうとする活動が、日本人の配偶者としての活動に該当することが必要と
なるというべきである。
2 もっとも、法別表第二の「日本人の配偶者等」の下欄には、日本人の配偶者としての活動の内
容を個別的・具体的に定めておらず、その活動の範囲を具体的に認識できるような規定も見当
たらないから、結局、社会通念に従って、その内容・範囲を判断するほかないというべきであ
るところ、婚姻は夫婦としての同居・協力・扶助の活動を中核とするものであることはいうま
でもないが(民法七五二条)、例えば、日本人配偶者の一方的な遺棄によって、それらの活動が
できない事態になったとしても、未だその状態が固定化されず、なおその婚姻関係を維持、修
復しうる可能性があるなど、その婚姻関係が実体を失って形骸化しているとみることができな
いような場合には、同居・協力・扶助の関係が失われたことから直ちに、社会通念上日本人の
配偶者としての活動を行う余地がなくなったと断ずることはできないというべきであるし(仮
に、被告が、夫婦としての同居・協力・扶助の関係が失われればそれだけで当然に日本人の配
偶者としての活動を行うとはいえないと主張する趣旨であれば、それは当裁判所の採用すると
ころではない。)、他方、既にその婚姻関係が回復し難いまでに破綻し、互いに婚姻関係を維持、
継続する意思もなく、婚姻関係がその実体を失い形骸化しているような場合には、もはや社会
通念上夫婦としての活動を行う余地があるものとはいえないから、かかる外国人配偶者がわが
国で行う活動は、夫婦としての活動というよりも、就労など他の目的をもった活動というべき
であって、そのような者までを、単に日本人と法律上の婚姻関係にあるというだけで、日本人
の配偶者としての活動を行う者に当たるということは困難であり、かかる外国人について、「日
本人の配偶者等」の在留資格を認める余地はないといわざるをえない。
3 原告は、日本人と法的に有効な婚姻関係にある外国人であれば、日本人の配偶者という身分
を有することのみで、「日本人の配偶者等」の在留資格を有する者であり、たとえ婚姻関係が破
綻しているとしても、適式に離婚していない以上、「日本人の配偶者等」の在留資格が認められ
る旨主張するが、前示のとおり、法は、個々の外国人がわが国で行おうとする活動内容に着目
し、一定の在留活動を行おうとする者に対してのみ、その活動内容に応じた在留資格を与える
こととした趣旨と解すべきであり、「日本人の配偶者等」の在留資格も、当該外国人が、わが国
でその身分を有する者としての活動として社会通念上予想される活動を行うことに着目して、
これを認めることとしたものとみるのが相当であって、原告の主張は法の趣旨に合致せず、採
用することができない。
4 右のような見地に立って、本件についてみるに、本件処分当時、原告とBの婚姻関係が未だ
完全に破綻してその実体を失い形骸化しているといえないことは既に検討したとおりであり、
原告に、社会通念上日本人の配偶者としての活動を行う余地がなくなったということはできな
いから、原告が、本件処分当時、「日本人の配偶者等」の在留資格に該当する要件を欠いていた
ということはできず、右要件を欠いていたことを理由に、「日本人の配偶者等」の在留資格によ
る在留期間の更新を許可する余地がなかったとする被告の主張は、失当である。
四 ところで、一定の在留資格に該当する要件を充足する外国人も、当然にはわが国で在留を継続
する権利を有するとはいえないのであって、更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるかど
うかの判断は、国内の治安と善良の風俗の維持などの国益保持の見地から、更新申請の理由の当
否のみならず、当該外国人の在留中の行状や国内外の情勢など諸般の事情を総合的に勘案して行
われる被告の裁量に委ねられているものである。しかしながら、その裁量権はもとより無制限な
ものではなく、被告の判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明
らかであるようなときは、その判断は、被告に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用が
あったものとして、違法となると解すべきである。
1 そこで、本件において、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がないとした被
告の判断に裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったかどうかについて検討するに、前示の
とおり、本件処分当時、原告とBの婚姻関係は未だ完全に破綻してその実体を失い形骸化して
いたということができないことは明らかであり、原告としては、できることならBと一緒に生
活したいと考え、引き続きわが国に在留することを希望していたものであり、本件に現れた原
告とBの婚姻関係の推移など前記認定した諸事情を合わせ考えれば、原告が、Bの配偶者とし
てわが国における在留を継続したいと考えたことには十分な理由があったというべきであっ
て、その更新を認めないとすれば、原告としては、Bとの婚姻関係を修復するための機会を失
い、本来、夫婦としてできる限りの努力を傾注して行うべき円満な婚姻関係の維持、修復のた
めの活動をわが国において行うことが不可能になるといわなければならない。
2 また、成立に争いのない乙第六号証の一によれば、原告は平成三年八月に在留期間の更新許
可申請をした際にBと同居している旨の申請書を提出していることが認められるが、前記認定
のとおり、その時点では、Bもいずれ原告と同居する意思があることを述べていたものであり、
原告において、同居の意思がないのに同居を装うためにだけそのような申請書を提出したとま
ではいえないことからすれば,原告の行為は、出入国管理行政の適正な執行を妨げるおそれが
あるものといえるが、必ずしもわが国の国益を具体的に損なうといえる程に悪質なものとまで
いうことはできないし、まして、原告が、わが国に在留するための手段として婚姻関係を利用
しようとする者であるということもできず、右の点をとらえて在留期間の更新を不許可とする
ことには十分な合理性があるということができない。
3 なお、被告は、同居していない配偶者の在留継続を認めることは偽装婚姻などを誘発する弊
害を生じると主張するが、前記認定したところからすれば、本件において、原告とBの婚姻が
偽装であるとか、原告が婚姻継続の意思を有しないのに、専らわが国で就労するためにBとの
婚姻関係を利用しようとしている者でないことは明らかであるから、一般的には被告主張のよ
うな懸念があるとしても、真にそのような状況にない原告について、単に同居していないとい
うだけで、その理由やその間の事情などを一切問うことなく、「日本人の配偶者等」の在留資格
による在留期間の更新を不許可とすべきであるとするのは妥当でないといわなければならな
い。 
4 そうすると、本件に現れた諸事情のもとでは、被告が、原告とBとの婚姻関係が破綻し既に
形骸化していることなどを理由に、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がない
として、原告に対し更新を許可しなかったことは、その判断の基礎とした事実の認識を誤った
か、あるいは、事実に対する評価を誤ったものというべきであり、他に特段の事情があること
の立証のない本件においては、社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるをえず、この点
において、本件処分は、裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったものとして違法というべ
きであり、取消しを免れない。
五 よって、原告の本件請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき行
政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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