損害賠償請求事件
平成14年(受)第687号(原審:東京高等裁判所平成13年(ネ)第1165号)
上告人:A、被上告人:国
最高裁判所第一小法廷(裁判官:島田仁郎・深澤武久・横尾和子・甲斐中辰夫・泉徳治)
平成16年1月15日
判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人三木恵美子、同大貫憲介、同姜文江、同菊地哲也、同近藤博徳、同鈴木雅子、同関守麻紀
子、同毛受久、同矢澤昌司、同山口元一、同井上啓、同金竜介、同小島周一、同渡邉彰悟、同児玉晃一の
上告受理申立て理由について
1 本件は、在留資格を有しない外国人である上告人が、国民健康保険法(平成11年法律第160号
による改正前のもの。以下「法」という。)9条2項に基づき、被上告人横浜市の委任を受けた横
浜市港北区長に対し、国民健康保険の被保険者証の交付を請求したところ、法5条所定の被保険
者に該当しないとして被保険者証を交付しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため、
被上告人国が同条につき誤った解釈を前提とする通知を発し、横浜市港北区長がこれに従ったこ
とにより違法な本件処分がされたと主張して、被上告人らに対し、国家賠償法1条1項に基づき、
損害賠償を請求した事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 上告人は、昭和27年12月2日、いわゆる在外華僑を父母として大韓民国において出生した。
 上告人は、昭和46年2月26日、親類を頼って短期滞在の在留資格で日本に入国したが、その
際、大韓民国の再入国許可を受けなかったため、同国における永住資格を喪失した。そこで、上
告人は、台湾に出国し、同年9月18日、就学の在留資格で再度日本に入国し、在留期間の更新
を受けながら、専門学校等で勉学を続けたが、卒業後、在留期間が更新される見込みがなくな
ったことから、同50年11月25日、大韓民国に出国した。しかし、大韓民国において永住資格を
回復することはできず、同国での在留期限も迫ったため、上告人は、同51年3月25日、台湾に
入国したが、台湾では国籍が確認されず、言葉も通じないため就職することができなかった。
 上告人は、昭和51年7月2日、上陸時間を72時間とする寄港地上陸許可を得て日本に上陸
し、上陸時間が経過した後も日本に残留して、中華料理店等で調理師として稼働した。上告人
は、同52年3月28日、台湾籍の女性と結婚し、同54年に長男が、同56年に長女がそれぞれ出生
した。妻と2人の子は、在留資格を得るため、日本と台湾との間を往復していたが、同59年7
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月15日に短期滞在の在留資格で日本に入国し、同年10月14日に在留期間を経過した後、そのま
ま日本に残留した。
 上告人は、昭和60年12月ころから平成12年12月まで横浜市港北区内に妻子と共に居住し、
同9年3月21日、横浜市港北区役所において外国人登録をした。この間、上告人は、不法滞在
状態を解消するため、同6年及び同8年に入国管理局に出頭したが、上告人の国籍を確認する
ことができなかったこともあり、違反調査が数回行われただけで、入国管理局からの連絡は途
絶えた。また、上告人は、上記外国人登録をした際、横浜市港北区長に対し、国民健康保険の被
保険者証の交付を請求したが、拒否された。
 上告人は、長男が脳腫瘍に罹患していることが判明した後、平成10年5月1日、妻子と共に
東京入国管理局横浜支局に在留特別許可を求める書面を提出し、同月20日付けで国民健康保険
の被保険者証の交付を請求(以下「本件請求」という。)したが、同年6月9日、本件処分を受け
た。
 外国人に対する国民健康保険の適用については、国民健康保険法施行規則の一部を改正する
省令の施行について(昭和56年11月25日保険発第84号都道府県民生主管部(局)長あて厚生省
保険局国民健康保険課長通知)及び外国人に対する国民健康保険の適用について(平成4年3
月31日保険発第41号都道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知。以
下、これらを「本件各通知」という。)が発せられている。本件各通知には、ア 国民健康保険の
適用対象となる外国人は、外国人登録法2条1項に規定する者であって、同法に基づく登録を
行っているものであり、入国時において、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)
2条の2の規定により決定された入国当初の在留期間が1年以上であるものであること、イ 
入管法2条の2の規定により決定された入国当初の在留期間が1年未満であっても、外国人登
録法に基づく登録を行っており、入国時において、我が国への入国目的、入国後の生活実態等
を勘案し、1年以上我が国に滞在すると認められる者も国民健康保険の適用対象となることな
どが定められており、在留資格を有しない外国人が国民健康保険の適用対象となることは予定
されていない。本件処分は、本件各通知に従って行われたものである。在留資格を有しない外
国人が国民健康保険の適用対象となるかどうかについては、定説がなく、下級審裁判例の判断
も分かれているが、本件処分当時には、これを否定する判断を示した東京地裁平成6年(行ウ)
第39号同7年9月27日判決・行裁集46巻8・9号777頁があっただけで、法5条の解釈につき
本件各通知と異なる見解に立つ裁判例はなかった。
 上告人及びその妻子は、平成10年11月24日、在留資格を定住者、在留期間を1年とする在留
特別許可を受けた。また、被上告人横浜市は、同月25日付けで、上告人に対し、国民健康保険の
被保険者証を交付した。
3 原審は、上記事実関係等の下において、在留資格を有しない外国人は法5条所定の被保険者に
該当せず、本件処分は適法であるとして、上告人の請求を棄却すべきものとした。
4 法は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与す
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ることを目的とする(1条)ものであり、市町村及び特別区(以下、単に「市町村」という。)を保
険者とし(3条1項)、市町村の区域内に住所を有する者を被保険者として当該市町村が行う国民
健康保険に強制的に加入させた上(5条)、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な
保険給付を行い(2条)、被保険者の属する世帯の世帯主が納付する保険料(76条)又は国民健康
保険税(地方税法703条の4)のほか、国の負担金(法69条1項、70条)、調整交付金(72条)及び
補助金(74条)、都道府県及び市町村の補助金及び貸付金(75条)、市町村の一般会計からの繰入
金(72条の2)等をその費用に充てるものとしている。そして、法は、上記のとおり被保険者を規
定した上で、その適用除外者を列挙し(6条)、当該市町村の区域内に住所を有するに至った日又
は6条各号のいずれにも該当しなくなった日からその資格を取得する(7条)ものとしている。
昭和56年厚生省令第66号による改正前の国民健康保険法施行規則(昭和33年厚生省令第53号)
1条2号は、「その他特別の理由がある者で厚生省令で定めるもの」を適用除外とする法6条8号
の規定を受けて、「日本の国籍を有しない者。ただし、日本国との条約により、日本の国籍を有す
る者に対して、国民健康保険に相当する制度を定める法令の適用につき、内国民待遇を与えるこ
とを定めている国の国籍を有する者、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関す
る日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号)第1
条の許可を受けている者及び条例で定める国の国籍を有する者を除く。」を適用除外者として規
定していたが、難民の地位に関する条約(昭和56年条約第21号)及び難民の地位に関する議定書
(昭和57年条約第1号)が締約されたのを受けて、昭和56年厚生省令第66号によって国民健康保
険法施行規則1条2号ただし書に「難民の地位に関する条約第1条の規定又は難民の地位に関す
る議定書第1条の規定により同条約の適用を受ける難民」が加えられ、さらに昭和61年厚生省令
第6号によって国民健康保険法施行規則1条2号が削除された。
このように、国民健康保険は、市町村が保険者となり、その区域内に住所を有する者を被保険
者として継続的に保険料等の徴収及び保険給付を行う制度であることに照らすと、法5条にいう
「住所を有する者」は、市町村の区域内に継続的に生活の本拠を有する者をいうものと解するのが
相当である。そして、法は、5条において被保険者を定める一方、6条においてその適用除外者を
定めており、日本の国籍を有しない者は、法制定当初は適用除外者とされていたものの、その後、
これを適用除外者とする規定が削除されたことにかんがみれば、法5条が、日本の国籍を有しな
い者のうち在留資格を有しないものを被保険者から一律に除外する趣旨を定めた規定であると解
することはできない。一般的には、社会保障制度を外国人に適用する場合には、そのよって立つ
社会連帯と相互扶助の理念から、国内に適法な居住関係を有する者のみを対象者とするのが一応
の原則であるということができるが、具体的な社会保障制度においてどの範囲の外国人を適用対
象とするかは、それぞれの制度における政策決定の問題であり(最高裁昭和50年(行ツ)第98号
同53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号435頁参照)、法の規定や国民健康保険法施行規
則の改廃の経緯に照らして、法が上記の原則を当然の前提としているものと解することができな
いことは上述のとおりである。また、国民健康保険は、国民の税負担に由来する補助金や一般会
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計からの繰入金等によって費用の一部が賄われているとはいえ、基本的には、被保険者の属する
世帯の世帯主が納付する保険料又は国民健康保険税によって保険給付を行う保険制度の一種であ
るから、我が国に適法に在留する資格のない外国人を被保険者とすることが国民健康保険の制度
趣旨に反するとまでいうことはできない(なお、国民健康保険法(平成11年法律第160号による
改正後のもの)6条8号は、「その他特別の理由がある者で厚生労働省令で定めるもの」を適用除
外とする旨を定め、これを受けて、平成14年厚生労働省令117号による改正後の国民健康保険法
施行規則1条は、「特別の事由のある者で条例で定めるもの」を適用除外者として規定していると
ころ、社会保障制度を外国人に適用する場合には、その対象者を国内に適法な居住関係を有する
者に限定することに合理的な理由があることは上述のとおりであるから、国民健康保険法施行規
則又は各市町村の条例において、在留資格を有しない外国人を適用除外者として規定することが
許されることはいうまでもない。)。
もっとも、我が国に在留する外国人は、憲法上我が国に在留する権利ないし引き続き在留す
ることを要求することができる権利を保障されているものではなく(最高裁昭和50年(行ツ)第
120号同53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁)、入管法及び他の法律に特別の規定が
ある場合を除き、当該外国人に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格又はそ
れらの変更に係る在留資格をもって在留し(入管法2条の2第1項)、各在留資格について法務省
令で定められた在留期間に限って在留することが認められるにすぎない(同法2条の2第3項)。
在留期間の更新を受けようとする外国人は、法務大臣に対し在留期間の更新を申請しなければな
らず(同法21条2項)、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留期間の更新を適当と認
めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる(同条3項)。そして、
我が国に不法に入国した者はもとより、寄港地上陸の許可等を受け、又は在留資格を得て適法に
入国した者であっても、旅券又は当該許可書に記載された期間を経過して残留し、又は在留期間
の更新若しくは変更を受けないで在留期間を経過して残留するものについては、我が国からの退
去を強制することができる(同法24条1号、2号、4号ロ、6号等)ものとされている。このよう
な我が国に在留する外国人の法的地位にかんがみると、外国人が法5条所定の「住所を有する者」
に該当するかどうかを判断する際には、当該外国人が在留資格を有するかどうか、その者の有す
る在留資格及び在留期間がどのようなものであるかが重要な考慮要素となるものというべきであ
る。そして、在留資格を有しない外国人は、入管法上、退去強制の対象とされているため、その居
住関係は不安定なものとなりやすく、将来にわたって国内に安定した居住関係を継続的に維持し
得る可能性も低いのであるから、在留資格を有しない外国人が法5条所定の「住所を有する者」
に該当するというためには、単に市町村の区域内に居住しているという事実だけでは足りず、少
なくとも、当該外国人が、当該市町村を居住地とする外国人登録をして、入管法50条所定の在留
特別許可を求めており、入国の経緯、入国時の在留資格の有無及び在留期間、その後における在
留資格の更新又は変更の経緯、配偶者や子の有無及びその国籍等を含む家族に関する事情、我が
国における滞在期間、生活状況等に照らし、当該市町村の区域内で安定した生活を継続的に営み、
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将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いと認められることが必要であると解するのが相
当である。
5 これを本件についてみると、前記事実関係等によれば、①上告人は、寄港地上陸許可を得て上
陸し、上陸期間経過後も我が国に残留している外国人であるが、②いわゆる在外華僑として大韓
民国で出生し、同国での永住資格を喪失し、台湾でも国籍が確認されないという特殊な境遇にあ
ったため、やむなく我が国に残留し続け、この間、不法滞在状態を解消するため、2度にわたり、
自ら入国管理局に出頭したものの、上記事情から不法滞在状態を解消することができず、その後
入国管理局からは何の連絡もなかったものであり、③本件処分までの滞在期間は約22年間もの長
期に及び、本件処分当時の居住地である横浜市では、調理師として稼働しながら、約13年間にわ
たって妻と我が国で生まれた2人の子と共に定住して家庭生活を営んできたものであって、④本
件請求時には、横浜市を居住地とする外国人登録をして、在留特別許可を求めており、その約半
年後には、在留資格を定住者とする在留特別許可を受けたというのである。これらの事情に照ら
せば、上告人は、被上告人横浜市の区域内で家族と共に安定した生活を継続的に営んでおり、将
来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いものと認められ、法5条にいう「住所を有する者」
に該当するというべきである。そうすると、本件処分は違法であるというべきであり、これと異
なる原審の判断は是認することができない。
6 しかしながら、ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し、実務上の取扱いも分か
れていて、そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に、公務員がその一方の見解を正
当と解しこれに立脚して公務を遂行したときは、後にその執行が違法と判断されたからといっ
て、直ちに上記公務員に過失があったものとすることは相当ではない(最高裁昭和42年(オ)第
692号同46年6月24日第一小法廷判決・民集25巻4号574頁、最高裁昭和63年(行ツ)第41号平
成3年7月9日第三小法廷判決・民集45巻6号1049頁等参照)。
これを本件についてみると、本件処分は、本件各通知に従って行われたものであるところ、前
記4のとおり、社会保障制度を外国人に適用する場合には、そのよって立つ社会連帯と相互扶助
の理念から、国内に適法な居住関係を有する者のみを対象者とするのが一応の原則であると解さ
れていることに照らせば、本件各通知には相当の根拠が認められるというべきである。そして、
前記事実関係等によれば、在留資格を有しない外国人が国民健康保険の適用対象となるかどうか
については、定説がなく、下級審裁判例の判断も分かれている上、本件処分当時には、これを否定
する判断を示した東京地裁平成6年(行ウ)第39号同7年9月27日判決・行裁集46巻8・9号
777頁があっただけで、法5条の解釈につき本件各通知と異なる見解に立つ裁判例はなかったと
いうのであるから、本件処分をした被上告人横浜市の担当者及び本件各通知を発した被上告人国
の担当者に過失があったということはできない。そうすると、被上告人らの国家賠償責任は認め
られないから、上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は、結論において是認すること
ができる。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官横尾和子、同泉徳治の
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意見がある。
裁判官横尾和子、同泉徳治の意見は、次のとおりである。
私たちは、本件処分が違法とはいえないとした原審の判断を正当と考える。その理由は、次のとお
りである。
1 国民健康保険制度は、市町村を保険者とし、当該市町村の区域内に住所を有する者を被保険者
としている。今日、国民健康保険制度の維持運営には、国、都道府県及び市町村から相当額の予算
が投入されているとはいえ、同制度は、当該市町村の区域内に住所を有する者を被保険者として
強制加入させて保険団体を形成した上、被保険者の属する世帯の世帯主に保険料又は国民健康保
険税の納付を義務付けて共同の基金を作り、これを主たる財源の一つとして、偶発的に疾病等の
保険事故に遭遇した住民に療養等の保険給付を行い、当該住民個人の経済的負担を市町村の住民
全員で分担するもので、住民の相扶共済の精神に立脚した地域保険である(最高裁昭和30年(オ)
第478号同33年2月12日大法廷判決・民集12巻2号190頁参照)。この地域保険としての性格は、
制度発足以来変わるところがなく、国民健康保険制度の健全な維持運営のためには、住民の強制
加入と、大数の法則、収支均等の原則を基本として算出される保険料等の徴収が不可欠であり、
また、疾病等が発生した場合に初めて加入するという、保険事故の偶発性を排除するいわゆる逆
選択を防止する必要もある。国民健康保険の被保険者を定める法5条の「住所」は、客観的居住の
事実を基礎とし、これに当該居住者の主観的居住意思を総合して認定するべきであるが、国民健
康保険の上記のような地域保険としての性格に照らし、この居住には継続性・安定性が要求され
る。
2 そして、上記の居住の継続性・安定性の要請から、外国人が日本国内に法5条の住所を有する
というためには、入管法により相当の在留資格と在留期間を付与され、法律上も一定期間継続し
て適法に居住し得る地位にあることが必要であるというべきである。在留資格を有しない外国人
は、いつでも日本から退去を強制され得る状態にあり(入管法24条)、処罰の対象ともされている
のであって(入管法70条)、日本国内での居住を保障されておらず、日本国内に生活の本拠を置く
ことが法律上認められていないというべきであるから、その居住地を法5条の住所と評価するこ
とはできない。在留資格を有しない不法滞在外国人は、地域保険たる国民健康保険の被保険者と
なるになじまないものというべきである。
3 上告人は、昭和60年12月ころから、配偶者及び2人の子と共に、いずれも在留資格のないまま
横浜市港北区内に居住していたが、平成10年3月、子の1人が脳腫瘍に罹患していることが判明
し、同年5月1日、東京入国管理局横浜支局において在留特別許可を申請し、同月20日付けで、
横浜市港北区長に対し国民健康保険被保険者証の交付を求める申請をしたところ、被上告人横浜
市の委任を受けた同区長は、同年6月9日、上告人に対し、上告人には在留資格がなく、法5条所
定の被保険者に該当しないことを理由に国民健康保険被保険者証を交付しない旨の本件処分をし
た。同区長が在留資格のない上告人に対し本件処分を行ったことは、上記のような理由により適
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法である。そして、同区長は、上告人が同年11月24日に在留資格を「定住者」、在留期間を1年と
する在留特別許可を取得したのを受けて、翌25日付けで上告人に対し国民健康保険被保険者証を
交付した。すなわち、同区長は、同年5月1日に在留特別許可を申請した上告人が、約半年後に在
留特別許可を付与されたのを待って、その翌日には国民健康保険被保険者証を交付しているので
あるから、本件処分を含めた同区長の上記一連の行為に違法と評価すべきものはない。上告人は、
在留特別許可の申請をした約20日後に国民健康保険被保険者証の交付を申請しているが、このよ
うな場合に国民健康保険被保険者証を直ちに交付すべきものとすれば、前記のいわゆる逆選択を
招くおそれがあるといわなければならない。原審の判断は正当である。
4 法廷意見は、在留資格のない外国人について、外国人登録をしていること及び入管法50条所定
の在留特別許可を求めていることを条件とした上で、当該市町村の区域内で安定した生活を継続
的に営み、将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いと認められる場合には、当該外国人
を法5条の「住所を有する者」と認定すべきであるという。法廷意見は、言葉を換えれば、在留特
別許可が与えられる可能性が高い場合は、当該外国人を法5条の「住所を有する者」と認定すべ
きであるというものであり、国民健康保険の保険者たる市町村の長に対し在留特別許可の与えら
れる可能性をあらかじめ判断させ、その判断を誤って国民健康保険被保険者証不交付処分を行え
ば、当該処分は違法の評価を受けるというものである。しかし、在留特別許可の付与は、国家主権
発動の一つとして政府(所管者法務大臣)が一元的に行うものであり、しかも政府の広範な裁量
にゆだねられているものである(最高裁昭和29年(あ)第3594号同32年6月19日大法廷判決・
刑集11巻6号1663頁、最高裁昭和34年(オ)第32号同34年11月10日第三小法廷判決・民集13巻
12号1493頁、最高裁昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223
頁参照)。このような出入国管理制度の建前に照らし、市町村長に上記のような判断を求めること
は相当でない(むしろ、市町村長は、入管法62条2項の規定により、不法残留者を通報すべき義
務を課せられているのである。)。

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