退去強制令書発付処分執行停止申立についてした決定に対する抗告事件
平成16年(行ス)第4号(原審:大阪地方裁判所平成15年(行ク)第41号)
抗告人(原審被申立人) :大阪入国管理局主任審査官、相手方(原審申立人):A  
大阪高等裁判所第10民事部(裁判官:下方元子・橋詰均・高橋善久)
平成16年2月2日
決定
主 文
1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。
理 由
第1 抗告の趣旨及び理由
1 抗告の趣旨
 原決定中、抗告人が相手方に対し平成15年10月17日付けで発付した退去強制令書に基づく
執行のうち、収容部分の執行を停止した部分を取り消す。
 前項の取消しに係る本件申立てを却下する。
 抗告費用は相手方の負担とする。
2 抗告の理由
別紙「抗告理由書」のとおりである。
第2 抗告に至る経緯
一件記録によれば次の事実が明らかである(以下、出入国管理及び難民認定法を「入管法」と、
行政事件訴訟法を「行訴法」という。)
1 相手方は、平成14年4月9日、在留資格を「就学」とし在留期間を1年として上陸を許可され、
わが国に入国し、和歌山市内に居住して同市内の日本語学校に通い、平成15年3月26日、a大学
に入学を許可され、そのころ、現住所に転居し、同年4月以降同大学に通学するようになった。
2 相手方は、平成15年4月14日、「就学」から「留学」への在留資格の変更及び平成17年4月9日
まで2年間の在留期間を許可された。
3 相手方は、入管法24条4号イ(資格外活動外国人)に該当するとして、平成15年8月21日午前
9時18分、収容令書によって身柄を拘束され、平成15年10月17日、入管法49条5項に基づき、退
去強制令書発付処分(以下「本件処分」という。)を受け、引き続き収容された。
4 相手方は、平成15年10月25日、大阪地方裁判所に対し、本件処分の取消しを求める本案訴訟を
提起するとともに、本件処分の執行の停止を求める本件申立てをした。
5 大阪地方裁判所は、平成15年12月1日、本件処分の送還部分及び収容部分のいずれについて
も、相手方に生じる「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある」(行訴法25条2項)と認
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め、かつ、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」又は「本案について理由がない
とみえるとき」(行訴法25条3項)に該当しないと判断し、本件処分全部の執行を停止する旨の決
定をした。
6 なお、相手方は、原決定がされた翌日(平成15年12月2日)午後零時10分、収容を解かれた。
第3 当裁判所の判断
1 事実経過について
一件記録によって認められる本件の事実経過は、原決定「事実及び理由」の「第3 当裁判所の
判断」1項と同じであるからこれを引用する。
2 行訴法25条2項の要件について
 当裁判所も、相手方に生じる「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある」ため、本件
処分については、収容部分を含め、その全部の執行を停止すべきものと判断するが、その理由
は、原決定「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」3項と同じであるからこれを引用する。
 抗告人は、原決定が本件処分のうち収容部分の執行まで停止したことを不服とし、その抗告
の理由において、退去強制令書によって身柄を拘束され、その結果わが国での在留活動ができ
なくなることそれ自体は外国人が受忍すべき損害であり、したがって、収容によってa大学に
通学できなくなるとの相手方の不利益は、行訴法25条2項所定の「回復の困難な損害」に該当
せず、原決定は、この要件に関する解釈適用を誤ったと主張する(抗告人は、当該外国人本人又
はその近親者等の生命身体の危険のみが「回復の困難な損害」に該当するというようである。)。
抗告人の主張は、不法在留者に関する事案では理解できないわけではないが、少なくとも、
相手方は、「留学」の在留資格が認められてその在留期間もいまだ経過しておらず、かつ、過去
の通学状況及び学業成績が良好であって、今後とも大学への就学意欲があると認められるので
あって、このような外国人についてまで、抗告人主張の解釈が妥当するかどうかは疑問である。
本件で収容を継続した場合、相手方は、本案訴訟で裁判所の判断を受けるまで(1審判決言
渡しまで)の間、審理が速やかに進行したとしても、少なくとも半年程度は教育課程(単位)を
履修する機会を奪われ留年を余儀なくされることが明らかであり、収容がされなかった場合と
同じ条件で大学に就学する機会は2度と訪れない。しかも、中国とわが国とでは物価水準の違
いが著しいため、留年をした結果わが国での就学年数が増え、学費及び滞在費用の負担が増加
した場合、最終的には相手方が大学卒業を断念せざるをえない事態も十分に発生し得る。
そうすると、収容によって大学への就学が阻害される不利益は、相手方のような外国人にと
っては、後日の金銭賠償によって償うことが困難な損害と認めて差支えがないものと思料され
る。
3 行訴法25条3項該当性について
 一件記録によっても、本件処分の執行を停止した場合に「公共の福祉に重大な影響を及ぼす
おそれがある」とすべき事実関係は何ら認められない。
 また、当裁判所も、相手方が入管法24条4号イ(資格外活動外国人)に該当するとは直ちに

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