退去強制令書発付処分取消請求控訴事件
平成16年(行コ)第114号(原審:大阪地方裁判所平成15年(行ウ)第91号)
控訴人:法務大臣、被控訴人:A
大阪高等裁判所第6民事部(裁判官:大出晃之・川口泰司・田中一彦)
平成17年5月19日

判決
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 原判決を取り消す。
 被控訴人の請求を棄却する。
 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は、出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前のもの。以下「法」
という。)24条4号イ所定の退去強制事由に該当するとして控訴人から退去強制令書の発付処
分(以下「本件処分」という。)を受けた被控訴人が、上記退去強制事由に該当する事実はない
から本件処分は違法であると主張して、本件処分の取消しを求めた事案である。
 原審裁判所は、被控訴人の請求を認容した。これに対し、控訴人が、上記第1の1のとおりの
判決を求めて控訴を提起した。
2 争いのない事実等(証拠の掲記のない事実は、当事者間に争いがない。)
原判決2頁7行目から同4頁16行目までに記載されているとおりである(ただし、同頁14行目
の「当庁」を「大阪地方裁判所」に改める。)から、これを引用する。
3 争点及びこれに関する当事者の主張
下記4のとおり、当審における当事者の主張を加えるほかは、原判決4頁18行目から同7頁4
行目までに記載されているとおりであるから、これを引用する。
4 当審における当事者の主張
 控訴人の原判決批判
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ア 退令処分の取消訴訟において主張できる違法事由について
ア 行政事件訴訟法においては、先行処分の要件該当性に関する争いは当該先行処分の段階
で終了させ、後行処分への影響を遮断することが予定されている。別個の行政処分の間に
おいて違法性が承継されるということは、行政事件訴訟法が本来予定しているものではな
く、例外的な場合に限られる。
イ 法は、入国審査官の認定に処分性を認めて、その適法性を争う機会を与え、その不服に
対して二段階の裁決(特別審理官の判定、法務大臣の裁決)の手続を設けている。また、こ
れらの各裁決に対する取消訴訟においては入国審査官の認定処分の要件該当性を違法事由
として主張することは認められていない(行政事件訴訟法10条2項)。さらに、法務大臣の
裁決と主任審査官の退令処分とは密接不可分の関係にある。以上のことなどからすれば、
法が、主任審査官の退令処分においてのみ、入国審査官の認定に係る違法事由を主張させ
ることを許容する特殊な立法政策を採用したとは考え難い。
ウ 以上からすれば、主任審査官の退令処分の取消訴訟において、入国審査官の認定処分の
誤りを違法事由として主張することはできないというべきであり、これに反する原判決の
法解釈は誤りである。
イ 法24条4号イの「専ら行っている」の該当性について
ア 「留学」の在留資格を有する者が本邦において行うことができる活動は、「本邦の大学若
しくはこれに準ずる機関、専修学校の専門課程、外国において12年の学校教育を終了した
者に対して本邦の大学に入学するための教育を行う機関又は高等専門学校において教育を
受ける活動」に限られる(法別表第1の4の表の「留学」の項)。「留学」の在留資格に該当
する活動のためには、本邦に滞在するための費用を支弁する十分な資力や支弁のための手
段を有した上で、教育機関等で教育を受けなければならず、かかる資力等を有せず、専ら
本邦において自ら就労して得た収入で生活費を支弁し、学費を捻出して教育を受ける活動
は、法が認めた「留学」の在留資格に該当する活動には当たらない(法7条1項2号、「出
入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令」の「法別表第一の四の
表の留学の項の下欄に掲げる活動」の項2号、法19条1項2号、同条2項参照)。
被控訴人は、資格外活動である就労の内容(特に、本件クラブでの稼働は、風俗営業が営
まれている営業所において行う活動であり、資格外活動許可が得られる余地のないもので
ある。)やその有償性・継続性にかんがみて、平成15年5月以降、少なくとも本邦滞在中の
必要経費の多くを自らの就労によって継続して賄うようになったということができるか
ら、被控訴人の活動は、その時期に在留資格「留学」で在留する者の活動には該当しなくな
ったというべきである。
原判決の判断は、在留資格「留学」の意義を正確に理解していない上、被控訴人の本件大
学における平成15年春学期における出席状況や成績を過大に評価する一方で資格外活動
の内容を考慮要素から除外している点で誤りである。
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イ 被控訴人は、平成15年6月19日に本件クラブの強制捜査が行われたという偶然の事情
によって、本件クラブにおける稼働を継続できなくなったものであり、強制捜査がなけれ
ばこれを継続していたことが明らかである。したがって、資格外活動を「専ら行っている」
といえるか否かを判断するには、同日より前の資格外活動の内容に着目してその継続性や
有償性を評価し、検討しなければならない。被控訴人の同日以前の収入額と同日以後の収
入額とを平均化して考慮した原判決は誤りである。
ウ 被控訴人の資格外活動の稼働時間は、在留資格「留学」の活動の時間と対比すべきであ
る。被控訴人の本件大学における履修時間は多くても1週間当たり22.5時間、全授業に出
席したとしても、せいぜい1か月当たり100時間程度(なお、出席が確認されている授業の
被控訴人の出席率は約82パーセントである。)であるから、被控訴人の資格外活動の稼働
時間が、本件大学における授業時間を大きく超えていたことは明らかである。
また、被控訴人が資格外活動許可(法19条2項、出入国管理及び難民認定法施行規則〔以
下「規則」という。〕19条)すら得ずに行っていたBにおける稼働時間や、そもそも資格外
活動が許可される余地のない本件クラブでのホステス業の稼働時間と在留資格「留学」で
在留する外国人が資格外活動許可を得て従事する活動の時間とを単純に比較することはで
きない。被控訴人は、資格外活動許可によって許容される範囲の稼働時間をも超える稼働
を行っていたものであり、被控訴人の行っていた資格外活動は、在留資格「留学」で在留す
る外国人に許容される活動を大きく逸脱していたものである。
 控訴人の原判決批判に対する被控訴人の反論
ア 退令処分の取消訴訟において主張できる違法事由について
ア 既に主張したとおり、法24条各号の該当性は、退令処分自体の固有の要件であるから、
本件において違法性の承継の問題は生じない。仮に、違法性の承継の問題であるとしても、
原判決が述べるように、入国審査官の認定の違法性は、退令処分に承継されるというべき
である。
イ 法務大臣の裁決が行政事件訴訟法3条3項の「裁決」に当たるとしても、次のとおりい
うことができる。すなわち、同法10条2項の適用を主張する理由があるのは、法務大臣の
裁決の取消訴訟において、入国審査官の認定の違法を争う場合に限られ、退令処分の取消
訴訟である本件と同項とは関係がない。また、法務大臣の裁決と退令処分とではその法的
性質や外国人に対する法的効果が大きく異なるから、両者は密接不可分なものとはいえな
い。
イ 法24条4号イの「専ら行っている」の該当性について
ア 資格外活動の内容は、法19条1項違反の違法性の程度に関わる問題であり、法73条の罰
則の適用においてその軽重を決定するための考慮事由となるものではあろうが、法24条4
号イの「専ら行っている」との要件の問題ではない。
被控訴人の資格外活動(ホステス)はクラブにおける酒食の提供に止まり、それ自体が
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違法であるとか公序良俗を乱す職種というわけではない。また、接客のアルバイトは、留
学生にとっては日本語の能力向上に資する貴重な機会であって、学業と本来両立し得ない
ものではない。資格外活動の内容を考慮したとしても、「専ら行っている」との要件が満た
されているとはいえない。
イ 被控訴人は、ホステスが肌に合わないため早晩辞める考えでいた。強制捜査がなければ
被控訴人が本件クラブにおける資格外活動を継続していたことが明らかであるなどという
控訴人の主張は、推測にすぎない。そのような仮定・推測に基づいて「専ら行っている」と
の要件が満たされているということはできない。
ウ 通常の刑事罰の適用・執行においては、謙抑性の見地から、段階的に刑を重くしていく
運用がされている。退去強制は、法における「極刑」ともいえる最大の不利益処分であり、
被控訴人に最初からいきなり退去強制を科す控訴人のあり方は、謙抑性、警察比例の原則
に反する。資格外活動に対する罰則の要件(単に法19条違反だけでよい。)と退去強制の
要件(「専ら行っている」との要件が必要とされる。)とにことさら差違を設けた法の趣旨
に照らせば、本件程度の違反で退去を強制することを法が想定していないのは明らかであ
る。
第3 当裁判所の判断
1 判断の要旨
当裁判所も、被控訴人の請求には理由があるものと判断する。その理由は、原判決7頁6行目
から同18頁18行目までに記載されているとおりであるから、これを引用する。ただし、下記2の
とおり補正する。
2 原判決の補正
 原判決7頁6行目の次に行を改めて以下のとおり加え、同頁7行目冒頭の「」を削る。
「 法の規定
法24条は「次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、
本邦からの退去を強制することができる。」と定め、日本国が同条所定の退去強制事由に該当す
る外国人の本邦からの退去を強制することができること、その場合には第五章「退去強制の手
続」の規定(法27条以下)によることを規定している。」
 同8頁10行目の次に行を改めて「 入国審査官の認定及び法務大臣の裁決の処分性」を加
え、同頁11行目冒頭の「」を削る。
 同9頁7行目から同10頁1行目までを次のとおり、同頁2行目冒頭の「」を「」に、それ
ぞれ改める。
「 入国審査官の認定の違法を理由に退令処分の取消しを求めることの可否
しかしながら、前記のとおり、入国審査官の認定、特別審理官の判定、法務大臣の裁決及び主
任審査官の退令処分は、退去強制という同一の行政目的を達成するための一連の手続を構成す
る処分であり、退令処分は、これを受ける外国人が法24条各号の一に該当すること(退去強制
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事由があること)を中核的根拠とする処分である。また、異議の申出に理由がないとする裁決
の通知を受けた主任審査官は退去強制令書の発付(退令処分)を義務付けられることになる。
以上の点や、前記のような法24条の規定に照らせば、同条所定の退去強制事由があるとの入国
審査官の認定に誤りがない旨の特別審理官の判定、同判定に対する異議の申出に理由がない旨
の法務大臣の裁決及びこれを受けてされた退令処分は、同条所定の退去強制事由があるとの入
国審査官の認定が正当なものであってはじめて、実体法的にその正当性が基礎付けられるとい
う関係にあることが明らかである。こうした関係からすると、入国審査官において、法24条各
号の一に該当する場合ではないのに、これに該当するとの認定をした違法は、これを是認する
特別審理官の判定、これに対する異議を棄却する法務大臣の裁決、さらにこれに基づいて一連
の手続の最終処分としてされる退令処分にも及び、上記違法性を承継した退令処分も瑕疵ある
処分といわざるを得ないものというべきである。したがって、入国審査官の認定の違法を理由
に退令処分の取消しを求めることは許されるものというべきである。
 控訴人の主張(原判決批判を含む。)について
この点、控訴人は、①法が入国審査官の認定に処分性を認めて、その適法性を争う機会を与
え、その不服に対して二段階の裁決(特別審理官の判定、法務大臣の裁決)の手続を設けている
こと、②これらの各裁決に対する取消訴訟においては入国審査官の認定処分の要件該当性を違
法事由として主張することは認められていない(行政事件訴訟法10条2項)こと、③法務大臣
の裁決と主任審査官の退令処分とは密接不可分の関係にあることなどに照らし、入国審査官の
認定の違法を理由に退令処分の取消しを求めることは許されないなどと主張する。
しかし、①先行する認定等の処分が独立の争訟対象となるとしても、早期救済のため争訟の
機会を与えたものにすぎないのであって、その段階で取消訴訟等を提起して争わなければ最終
処分である退令処分においてその違法を主張して争うことを許容しない趣旨であるとは到底考
えられない(早期救済のために争訟の機会が与えられている場合に、その後の救済の機会が制
限されることが当然のことであるかのように述べる控訴人の主張には、論理の飛躍があるとい
わざるを得ない。)。②また、法務大臣の裁決の取消訴訟において入国審査官の認定の違法を主
張し得るかどうかは行政事件訴訟法10条2項のいわゆる原処分主義の適用があるかどうかの
問題であるが、本件において取消しを求められている退令処分は、入国審査官の認定との関係
では「その処分(本件では入国審査官の認定)についての審査請求を棄却した裁決」に当たらな
いことが明らかである。すなわち、本件は、同条項の直接の適用場面ではないのである。③それ
にもかかわらず、法は、退令処分の取消訴訟において入国審査官の認定の違法を主張し得ない
という趣旨の明文規定を置いていない。一方、退令処分は、執行官である入国警備官に対し退
去強制の執行を命令する文書である退去強制令書(法51条、52条参照)を発付するという退去
強制に直結する重大な処分であるが、前記のとおり法24条各号所定の退去強制事由があるとの
入国審査官の認定が正当なものであってはじめて、実体法的にその正当性が基礎付けられるも
のである。
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これらの点に照らせば、異議の申出に理由がないとする裁決の通知を受けた主任審査官が退
去強制令書の発付(退令処分)を義務付けられるという点(控訴人は、この点をとらえて法務大
臣の裁決と退令処分とが「密接不可分」であると主張しているものと解するほかない。)を根拠
に、法が入国審査官の認定と退令処分との関係について、行政事件訴訟法10条2項と同様の規
制を及ぼすという立法政策を採用しているとは解されない。控訴人の主張は、採用することが
できない(なお、上記のような解釈は、実体法である法の規定によって導かれるものである。
したがって、控訴人が行政事件訴訟法について述べるところは、これまで述べたような当裁判
所の判断を左右するものではない。)。」
 同10頁5行目の次に行を改めて「2 事実の認定」を加え、同頁6行目冒頭の「2」を削り、
同頁8行目の「原告本人」の次に「〔1審。以下同じ。〕」を加え、同頁14行目の「46万4025万円」
を「46万4025円」に改める。
 同12頁25行目の次に行を改めて「ア 法及び規則の規定」を加え、同頁26行目冒頭の「ア」
を削り、同13頁5ないし6行目の「出入国管理及び難民認定法施行規則(以下「規則」という。)」
を「規則」に改め、同頁22行目の次に行を改めて「イ 判断基準」を加え、同頁23行目冒頭の「イ」
を削り、同頁26行目の「解される」の次に「(なお、「全訂出入国管理及び難民認定法逐条解説」
514頁にも同様の記載がある。)」を加える。
 同16頁15ないし16行目の「深夜にわたるものであり、」の次に「一般論をいえば、」を加え、
同17頁16行目から同18頁18行目までを次のとおり改める。
「ケ まとめ
以上のとおり、被控訴人の資格外活動の稼働時間及び報酬額並びに被控訴人の就学状況から
すれば、被控訴人が、その在留目的が留学から就労その他の報酬を受ける活動に実質的に変更
したといえる程度に資格外活動を行っていたとはいえず、被控訴人が資格外活動を「専ら行っ
ている」者であったとは認められない。したがって、被控訴人の資格外活動が法24条4号イ所定
の要件を満たしているとはいえないから、同要件が満たされることを前提にされた大阪入管入
国審査官の認定ないし大阪入国管理局長の裁決に基づいて控訴人が行った本件処分は違法であ
る。
 控訴人の主張(原判決批判を含む。)について
ア まず、控訴人は、原判決の判断は、①在留資格「留学」の意義を正確に理解していない
(被控訴人の活動は在留資格「留学」で在留する者の活動には該当しなくなったというべきであ
る。)、②被控訴人の本件大学における平成15年春学期における出席状況や成績を過大に評価す
る一方で資格外活動の内容を考慮要素から除外している点で誤りである、などと主張する。
しかし、被控訴人が、報酬を受ける活動を「専ら行っている」といえるかどうかは、その活動
の時間の程度、継続性、報酬の多寡、留学の目的である学業の遂行を阻害していないかなどを
総合的に考慮し、在留目的たる活動が実質的に留学ではなく、就労その他の報酬を受ける活動
に変更したといえる程度に達しているか否かをもって判断すべきことは、既に述べたとおりで
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ある。上記①の控訴人の主張は、結局のところ、被控訴人が、法19条1項の規定に違反したと
いうことを言葉を変えて述べているものにすぎず、採用できない。
また、控訴人は、本件クラブでの稼働は風俗営業が営まれている営業所において行う活動で
あり、そもそも資格外活動許可が得られる余地のないものであるから、このような資格外活動
の内容も勘案すべきであるなどと主張する。しかし、資格外活動の内容が資格外許可の得られ
ない活動であることが、法73条の適用場面において違法性の程度の判断に影響し得るとして
も、少なくとも本件クラブにおいて稼働中の被控訴人の仕事の内容それ自体が公序良俗に反す
るようなものではない本件においては、そのことをもって直ちに資格外活動を「専ら行ってい
る」と推認すべきであるとか、その判断に決定的な影響を与えるものであるということはでき
ないことが明らかである(控訴人の主張は、「専ら行っている」との要件と、これとは別個の要
件である「法19条1項の規定に違反して」とを、混同したものと解される。)。さらに、当裁判所
は、被控訴人の資格外活動の稼働時間及び報酬額も十分に勘案した上で、前記のような判断を
行ったものであって、被控訴人の本件大学における平成15年春学期における出席状況や成績を
過大に評価しているとの控訴人の主張は、独自の評価を述べるものにすぎない。結局のところ、
上記②の控訴人の主張も、採用できない。
イ 被控訴人は、平成15年6月19日に本件クラブの強制捜査が行われたという偶然の事情
によって、本件クラブにおける稼働を継続できなくなったものであり、強制捜査がなければ本
件クラブにおける稼働を継続していたことが明らかであるとか、強制捜査前の資格外活動の内
容に着目してその継続性や有償性を評価し、検討すべきである、などと主張する。
確かに、被控訴人の供述(乙23、24、被控訴人本人)中には、Bや他のアルバイト先でアルバ
イトを続けるつもりであったという趣旨の部分がある。しかし、被控訴人は、学業は続けて卒
業したいとの供述をしていることからして、上記供述部分も、本件大学における勉学をおろそ
かにしてまで本件クラブ等での稼働に専念したり、これを拡大して稼働するという趣旨のもの
とは認められないし、前記認定のとおりの被控訴人の稼働状況をも考慮すれば、強制捜査がな
かった場合に、被控訴人が、その在留目的が留学から就労に実質的に変更したといえる程度に
資格外活動を行うに至っていたとも断定できない。
また、前記認定のような本件の事実関係に照らせば、強制捜査より前の資格外活動の内容に
着目して継続性や有償性等を評価したとしても、被控訴人が、その在留目的が留学からその他
の報酬を受ける活動に変更したといえる程度に資格外活動を行っていたとまでは評価できない
というべきである。
結局のところ、上記のような控訴人の主張も、採用することができない。
ウ さらに、控訴人は、①被控訴人の資格外活動の稼働時間は、在留資格「留学」の活動の時
間と対比すべきであるとか、②被控訴人が資格外活動許可を得ずに行っていた稼働の時間と在
留資格「留学」で在留する外国人が資格外活動許可を得て従事する活動の時間とを単純に比較
することはできない、などとも主張する。
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しかし、資格外活動許可を得た場合に認められる稼働時間(1週間28時間以内)や、被控訴
人の本件大学における履修時間は、一般的な大学生の履修時間と比較しても有意な差はないと
考えられることに照らせば、上記①の控訴人の主張が本件の結論を左右するに足りる議論でな
いことは明らかである。
また、被控訴人が資格外活動を「専ら行っている」者に当たるか否かの判断、すなわち、被控
訴人が、その在留目的が留学から就労その他の報酬を受ける活動に実質的に変更したといえる
程度に資格外活動を行っていたといえるか否かの判断に当たって、在留資格「留学」によって
本邦に在留する外国人が行いうる資格外活動の時間がどれだけであるかを判断資料とすること
は合理的なものというべきである(なお、資格外活動の許可を得ていないことは、「法19条1項
の規定に違反して」資格外活動を行っているか否かの問題であって、資格外活動を「専ら行っ
ている」か否かの問題ではない。また、本件の事実関係のもとにおいては、被控訴人の資格外活
動の内容が、法24条4号イ所定の「専ら行っている」との要件の存否の判断に決定的な影響を
与えるものではないことは、既に述べたとおりである。)。
上記控訴人の主張も、採用することができない。
エ その他、控訴人がるる主張するところは、いずれも前記のような当裁判所の判断を左右
するに足りるものではない。結局のところ、控訴人の主張は、理由がないことに帰する。」
3 結論
以上の次第であって、被控訴人の請求には理由があるから認容すべきであり、これと同旨の原
判決は相当である。よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり
判決する。

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