退去強制令書等執行停止決定に対する即時抗告事件
平成18年(行ス)第6号(原審:広島地方裁判所平成18年(行ク)第14号)
抗告人:国、相手方:A
広島高等裁判所第2部
平成18年12月8日

決定
主 文
1 本件即時抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。
理 由
第1 抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消す、相手方の申立てを却下する。」というものである。本件抗告の理由は、別紙「抗告理由書」記載のとおりである。
第2 事案の概要
事案の概要は、原決定4頁18行目を「キ 相手方は西日本入国管理センターに収容されていたが、原決定により平成18年10月18日に出所した。」と改めるほかは、原決定「事実及び理由」の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
なお、当事者の主張として次の点を付加する。
1 抗告人の主張
 本案について理由がないとみえるといえるか否かについて
出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)24条4号イに規定する活動を「専ら行っている」とは、在留目的たる活動が在留資格たる活動から変更されたと評価できる程度まで在留資格外の活動を行っていることをいう。
留学の資格で在留する外国人が資格外活動を行って本邦滞在中の必要経費を賄おうとする程度にまで至っている場合は入管法24条4号イに該当すると解すべきであるところ、相手方の稼働状況(期間、頻度、報酬の額等)のほか、以下の点を考慮すると、相手方はこれに該当する。
ア 相手方の両親には、相手方が本邦に滞在する経費を支弁する能力はない。
したがって、相手方がこれまで本国から送金を受けていたという事実自体、極めて疑わしい。
イ 相手方は、ホステスをして多額の収入を得ていたから、奨学金を受給することができないにもかかわらず、違法な手段で奨学金を受給し、生活費用に充てていた。そのため、今後、奨学金の支給が打ち切られることやこれまでの支給分の返還請求を受けることも十分予想される。
ウ 入国審査に関する入管法7条1項2号の基準を定める省令によれば、留学のための入国については「申請人がその本邦に在留する期間中の生活に害する費用を支弁する十分な資産、奨学金その他の手段を有すること。」が基準の1つとなるところ、相手方はこの基準を満たしていない。
 収容部分の執行停止について「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」とはいえないことについて
ア 本案で相手方が勝訴する可能性はほとんどないというべきであり、将来あり得べき相手方の送還のため、相手方を収容すべき必要性は高い。
イ また、退去強制令書の執行による収容は、送還のために身柄を確保するためだけでなく、我が国におけるこれ以上の在留活動を禁止する趣旨を含むものである。相手方のこれまでの長期間に及ぶ違法就労活動や、今後、生活費を得るためには違法就労によるしかないことからすれば、相手方を収容する必要性は高い。
ウ 相手方が退去強制令書の執行によって身柄を拘束され、学業の継続に一時支障が生じるとしても、退去強制令書発付処分により維持される行政目的達成の必要性を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならないほど重大な損害が発生するとはいえない。すなわち、相手方の収容が継続するとしても、休学制度を利用するなどすれば、直ちに退学処分になることもないし、後に学業を再開することも可能である。また、相手方が本邦での就職を予定しているとしても、これまでの在留状況の悪質性や資格外活動から在留資格変更が許可される可能性は皆無であるから、収容の継続が就職可能性に影響を及ぼすこともない。
2 相手方の主張
 本案について理由がないとみえるといえるか否かについて
入管法24条4号イ該当性の判断基準に関する抗告人の主張(上記1)は争う。抗告人の主張によれば、留学資格を待った外国人が資格外活動をした場合には、そもそも法が保護を予定している活動ではないとして、すべて同規定に該当することになるが、そのような解釈は条文の文言にも立法趣旨にも反する。
また、仮に抗告人が主張する判断基準によるとしても、「その程度が本邦滞在中の生活費等を賄おうとするにまで至っている場合」に当たるか否かを判断する必要があるところ、その判断は、仮の処分の段階では不可能であり、本案によって明らかにされるべきである。
なお、相手方の両親には経費支弁能力はある。
 収容部分の執行停止について「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」ことについて平成18年10月28日、相手方の義母が相手方の長女を連れて来日するとともに、相手方の就学費用として250万円を援助しており、相手方は不法就労をする必要はなく、あと2年で大学院を卒業できる見込みである。しかし、収容の執行停止がされなければ、相手方は、学問の自由を侵害される上、就職にも大きな支障が生ずるとともに、家族が離ればなれにならざるを得ない状態になる。
抗告人は、就職するための在留資格変更が許可される可能性はないから、就職の可否は執行停止の理由にならないなどと主張するが、就職に伴う在留資格変更は、まだ申請もされていない将来の問題であるから、本件執行停止中の可否の判断において考慮すべきではない。
なお、相手方は、平成18年10月28日以降、夫及び長女並びに妹と同居しているが、現在、第2子を懐妊している。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
以下のとおり改めるほかは、原決定「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」「1 認定事実」のとおりであるから、これを以下に引用し、加筆訂正した箇所をゴシック体太字で記載する。
前記前提事実、疎明資料(甲2〜18、乙5〜7、10、13)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が一応認められる。
 学業の状況
相手方は平成14年4月にb大学経済科学部に入学して平成18年3月に卒業し、同年4月からb大学大学院経済科学研究科(博士前期課程)に在籍して金融論を専攻している。同月11日、同年度前期後期ともそれぞれ講義各4コマ及び集中講義1コマの履修登録をした。
講義にはほとんど毎回出席しており無断欠席をすることはなく、大学院進学後も、所用で帰国していた平成18年4月25日から同年5月16日までの間(講義があったのはそのうち7日間)と当局による身柄拘束中以外は全て出席しており、大学側からは出席状況は非常に良好であると評価されている。講義が終わった後も大学図書館に残って資料の調査・レポート作成・金融政策の勉強などに勤しみ、帰宅は通常午後4時ないし5時頃であった。
成績も、学部においては全取得単位数73科目140単位のうちAA(90〜100点)が7科目13単位、A(80〜89点)が32科目68単位等、大学院の平成18年前期に履修した5つの授業科目の成績も全てA(80〜100点)であるなど良好で、学部、大学院とも授業料等免除の特別待遇を受けている。なお、指導担当のB・経済科学部教授によれば、相手方は与えられた課題はこなしていたが最近ははっきりとした進歩がみられず停滞気味であると評されている。
相手方は、B教授を尊敬し、今後も少なくとも大学院修士課程を修了するまでは日本に在留して同教授の下で勉強を続けたいと考えている。大学側からは大学院で良い論文を書けば国籍国のg銀行の東京支店への就職の推薦が得られると言われており、それが不可能でも日中関係に関わる業務に就きたいという希望を強く持っている。
相手方の在籍する大学院の2006年度(平成18年度)後期課程が既に平成18年9月20日に開始されており、平成19年1月中旬には試験が予定されている。
また、広島入管宛てで、大学教授や大学院生から、相手方の学業の継続を願う趣旨の嘆願書が少くとも8通寄せられた。
 稼働の状況
相手方は、前記前提事実のとおり、平成14年12月頃以降ホステスとして不法就労を始め、平成16年5月ころまではラウンジ「c」で、同年6月ころから平成17年2月ころまではスタンド「d」で、同年11月21日から平成18年5月15日ころまではラウンジ「e」でそれぞれ稼働した後、同月18日から同年7月14日までの間はラウンジ「f」で稼働していた。
給与額は、ラウンジ「c」では平均月額約20万円、スタンド「d」では月額約20ないし25万円、ラウンジ「e」では概ね月額20万円余り(総額約120万円)であった。
ラウンジ「f」では、1週間に6日、午後7時ないし8時頃に出動して約5.5時間働いており、時給は最初の2か月間は2800円、その後は3000円であった。稼働状況は、平成18年5月が12日間、6月が26日間、7月が12日間などであり、報酬支給額は、5月が16万7730円、6月が39万4060円、7月が17万8350円(合計74万0140円)であった。
相手方がホステスを選んだのは、学費と生活費等のために学業に影響を与えないように短時間・高収入の仕事に就きたかったためである。
相手方の不法就労事実が確認された後、相手方がホステスとして稼働した事実を認めるべき疎明資料はなく、入国警備官による第1回取調べを受けた平成18年7月31日には職業をホステスとしていたが第2回の取調べを受けた同年8月16日には学生としている。
なお、相手方は資格外活動の許可を得ないで就労することやホステスとして稼働することが違法であるかもしれないことは感じ取っており、広島入管に対しても稼働の事実を秘匿しつつ継続してきたものである。
 相手方の生活状況等
相手方は、財団法人hの平成15年度の奨学金奨学生になり、月額3万円の奨学金の給付を受けた。また、平成17年4月から平成18年3月までは独立行政法人iから月額5万円の奨学金の支給を受けた。
相手方は、本邦の住居が衛生面で問題があるなどとして、平成18年4月26日に帰国した際長女を夫の両親に預けてきた。その後広島市内の市営住宅に転居し、収容当時夫・Cと妹と共に生活していた。なお、相手方は、転居により衛生面の問題がなくなったとして8月には子を本邦に引き取って養育する予定であったと述べている。
なお、平成18年10月28日、長女が再来日し、相手方らと同居するようになった。また、相手方は、現在、第2子を懐妊している。
Cは、広島入国管理局宛てに、相手方が逃走したり資格外活動をしたりしないよう監督することを誓約する旨の平成18年8月19日付け身元引受書(甲18)を提出した(相手方自身も、同年7月31日の入国警備官の取調べに対し、呼出しがあればできる限り応ずることを約束している)。なお、Cは腰部打撲傷により平成18年9月9日頃14日の安静加療を要する傷害を負い、本件申立て当時、日常生活に支障をきたす状態にあった。
2 判断
 本案について理由がないとみえるといえるか否かについて
ア 入管法19条1項2号、別表1の4は、留学の在留資格で在留する者について、報酬を受ける活動を禁止しており、それに違反した場合の罰則が同法73条に規定されている。
また、同法19条1項に違反した場合のうち、報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる場合は、法定刑の重い別の罰則規定(同法70条1項4号)が設けられてる上、同法24条4号イにより、退去強制事由とされている。したがって、単なる同法19条1項違反は退去強制事由ではない。
イ 以上のような入管法の規定等に照らすと、同法24条4号イにいう「専ら行っている」とは、報酬を受ける活動を行うことによって、在留目的が実質的に変更したと認められることを意味すると解するのが相当である。
そして、それを判断する際には、当該活動の内容、継続性、有償性、生計維持に果たす割合、本来の在留資格に基づく活動の有無・程度等を総合的に勘案すべきである。
なお、抗告人は、留学の在留資格は、経費支弁能力を前提としていることを理由に、報酬を受ける活動が本邦滞在中の必要経費を賄おうとするまでに至っている場合は、学業の遂行自体が就労によって阻害されていないとしても、在留目的が留学から変更されたことになると主張する。しかしながら、経費支弁能力があることを前提とする規定を置いているのは法自体ではなく法施行規則等であり、これらは留学のための在留という目的を達成するためには通常は経費支弁能力が必要であるとの見地に立った定めと理解することができ、これらの定めがあることを法の解釈判断の決定的理由とすることはできない。そして、入管法は、在留
目的が留学である場合でも、法務大臣の許可を得て報酬を受ける活動をすることができることを認めていること(19条2項)などからすれば、報酬を受ける活動が本邦滞在中の必要経費を賄うとするまでに至っているとの一事をもって退去強制事由に該当すると解するのは相当でない。上記のとおり、資格外活動によって得られた報酬の額や生計維持に果たす役割、本来の在留目的への影響等を総合的に判断すべきである。
ウ そこで判断するに、相手方の報酬を受ける活動は、入国後2年を経ずして開始され、以後、摘発されるまで3年以上にわたって行われ、その間に得た報酬の額も月額で概ね20万円を超え、平成17年11月21日から平成18年7月14日までの約8か月で合計194万円程度に上るのであって、軽易なものではない。しかも、相手方の本邦での滞在費の原資は、これら不法就労による報酬のほかは、一定期間に受給した月額数万円の奨学金が明らかになっているにとどまり、両親からの送金等は裏付ける資料がない。したがって、相手方は、本邦での滞在費の大半を不法就労による報酬で賄っていた可能性も高いと言わざるを得ない。
しかしながら、他方で、本来の在留目的である留学については、4年間在籍したb大学と現在在籍中の同大大学院を通じて出席状況や単位取得状況、成績等において問題はなく、報酬を受ける活動が本来の在留目的の支障になっていることは窺えない。
また、相手方が就労していたホステスとしての活動は、性質上、夜間のものであり、かつ、昼間の就労に比較して比較的短時間にとどまっていることからも、本来の在留目的の支障になる度合いが少ないものであることが認められるところである。
エ 以上を総合すれば、相手方につき、報酬を受ける活動を行うことによって在留目的が実質的に変更したと認めることができるか否か、すなわち入管法24条4号イに規定する事由があるか否かは即断し難く、「本案について理由がないとみえるとき」に当たらない。
 重大な損害を避けるための緊急の必要の有無について
一部改めるほかは原決定摘示のとおりであるから、これを以下に引用し、加筆訂正した箇所をゴシック体太字で記載する。
アア 行訴法25条2項にいう「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」とは、処分の執行等によって維持される行政目的の達成の必要性とその執行によって相手方が被ることあるべき損害とを当該損害の回復の困難の程度を視野に入れつつ考慮して、行政目的の達成を一時的に犠牲にしても相手方に救済を与えなければならない緊急の必要性があるかどうかを判断すべきである。もっとも、同法の定める執行停止の制度が処分の取消しの訴えの提起が当該処分の効力等を妨げないことを前提とし、その後に勝訴判決を得たとしてもそのことによっては相手方の救済の実効性を挙げることができないことを回避する目的に出たものであることに照らせば、損害回復の困難の程度は損害の重大性の判断を大きく左右するものと解すべきである。
イ 他方、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかは、専ら当該国家において自由に決定できるものとされており、我が憲法においても外国人に対して本邦に入国ないし在留する権利ないし自由を認めるべきことは規定されていないのであって、我が国の入管法は在留資格制度を採用し、個々の外国人が本邦において行おうとする活動に着目しその活動内容に応じた在留資格を取得させ、本邦への上陸及び在留を認めることとしているところである。
そして、退去強制令書の発付処分は、その名宛人を送還するために身柄を確保するとともに、本邦における違法な在留活動を爾後抑制するなどの行政目的によるものであるから、身体の自由を制限すべき必要性ないし緊急性が高く、これに代わる手段を見出し難い。
ウ したがって、退去強制令書の執行によって名宛人の身体の自由が制限されることは、その態様及び期間が合理的なものであって、被収容者においてその身体の自由に対する制限によって重大な損害を被ることを避けるための緊急の必要がある特段の事情がない限り、原則として許されると解すべきである。
イア 前記認定事実によれば、相手方の在籍する大学院の後期課程が既に平成18年9月20日に開始されており、平成19年1月中旬には試験が予定されていることから、早期に後期課程に復学しなければ特待生としての授業料の免除等も受けられなくなるとともに、大学の推薦を得てg銀行東京支店に就職する道も閉ざされることになるおそれが大きいことはたやすく推認される。さらに収容が長期間に及べば大学からの除籍という事態を招来するおそれも否定できず、その場合再度我が国の大学院に再入学することは事実上不可能となる危険性も否定できない。したがって、本件退去強制令書発付処分のうち収容部分を執行すれば相手方がこれまで積み重ねてきた我が国における勉学の成果(削除)が水泡に帰する結果となり、そのことが相手方の今後の人生に大きな影響を及ぼすという意味で回復困難な損害を受ける蓋然性が高い。
なお、抗告人は、入管法は収容により被収容者の移動の自由が制限されそれに伴って精神的苦痛等の不利益が生ずることを当然に予定しているのであり、収容によりある程度の損害が生ずるとしても被収容者にはできる限りの自由が認められているから、収容部分の執行により被収容者が受ける損害は「重大な損害」には当たらないという趣旨の意見を述べる。しかし、前記のとおり相手方において被ることあるべき損害が収容によって当然に生ずる類型的な損害にとどまるものということはできないから、抗告人の前記意見は失当である。
また、抗告人は、相手方が、今後、本邦で就職を予定しているとしても、在留資格変更が許可される可能性は皆無であるから、収容が継続しても就職には影響がないと主張する。
しかしながら、収容が継続することによって相手方に生ずる損害は、本邦での就職ができなくなることだけではないから、上記抗告人の主張は、緊急の必要性を否定するには足りない。
イ 退去強制令書発付処分の収容部分の執行は、単に送還のために身柄を確保するのみならず、退去強制事由該当者の我が国におけるこれ以上の在留資格に反する活動を阻止する趣旨が含まれることは前述のとおりである。
本件においては、相手方が資格外活動許可を取って適法な就労をするのではなく違法かも知れないことを認識しながら安易にホステスとして平成14年以降長期間にわたって稼働してきたとはいえ、その主要な目的は学生生活を維持することにあったものとみられるし、相手方が5年以上にもわたって本邦で勉学に励んできたこと、現在既にホステスを辞め、復学を強く希望し、大学院で研究生活を行い質の高い論文を書いて学位を取ればg銀行東京支店への就職も期待できるから、復学には多大な利益を有していることに加え、夫
が身元引受人を申し出ており相手方の監督を引き受けると誓約していること、相手方には長女がいるほか、第2子を懐妊中であり、今後長女や第2子を養育していく必要があることなども総合すると、早期に復学できさえすればこれまでの努力を無にして家族との生活を崩壊させるようなことは厳に慎むであろうことが期待される。また、学費については免除されているし、生活費についても夫の稼働、親族からの仕送りや適法な就労によってまかなうことが不可能であるとはいえないから、少なくとも本件に関する一審の司法判断があるまでは生活費等を得るために不法就労を行わざるを得なくなるというような事態も具体的には想定し難い。
したがって、在留資格に反する活動を阻止するという目的のために収容部分の執行という手段を用いる必要性、合理性は低い。
ウ 以上のとおり、収容部分の執行継続による相手方の学業に与える損害は回復困難な程度に達する蓋然性があるのに対し、行政目的を達するために収容部分の執行という手段によらなければならない必要性があるとはいえず、このことはより重い処分である送還部分についても同様であるから、退去強制令書の執行による行政目的の達成を一時的に犠牲にしても相手方を救済しなければならない緊急の必要性があるというべきである。
エ 仮放免制度(入管法54条)の存在は上記判断を左右するものではない。

ウ なお、一審判決後は判決の結論を踏まえて改めて執行停止の可否を判断するのが相当であるから、本件退去強制令書発付処分の執行は、本案事件の第一審判決の確定又は同判決言渡しの日から30日を経過する日までのいずれか早い時まで停止するのを相当とする。
 公共の福祉への重大な影響の存否について
原決定説示のとおりであるから、以下に引用する。
抗告人がこの点に関して主張するところはいずれも抽象論に過ぎず採用することはできない。また、一件記録によっても、本件退去強制令書発付処分の執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあると評価し得るような事実の存在を認めることはできない。
また、相手方において被ることあるべき重大な損害の内容は相手方固有の特殊な事情に基づくものであるから、本件において執行の停止を認めることが他の事例に及ぼす影響は大きくないと思科される。
3 以上によれば、相手方の退去強制令書の執行停止の申立ては、一審判決の確定又は同判決言渡しの日から30日を経過する日のいずれか早い時まで停止するのが相当であり、抗告人の本件即時抗告は理由がないから棄却することとし、主文のとおり決定する。

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