上陸許可取消処分取消等請求控訴事件
平成18年(行コ)第126号
控訴人:東京入国管理局長・東京入国管理局主任審査官、被控訴人:A
東京高等裁判所第19民事部
平成19年2月27日

判決
主 文
本件各控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人ら
 原判決中、控訴人らの敗訴部分を取り消す。
 被控訴人の控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。
2 被控訴人
本件控訴を棄却する。
第2 事案の概要等
本判決においては、以下の略語等を使用する。
・中華人民共和国を「中国」という。
・東京入国管理局を「東京入管」という。
・原審被告東京入国管理局入国審査官を単に「入国審査官」という。
・控訴人東京入国管理局長を「控訴人東京入管局長」という。
・控訴人東京入国管理局主任審査官を「控訴人主任審査官」という。
・平成17年法律第66号による改正前の出入国管理及び難民認定法を「出入国法」といい、平成16年法律第73号による改正前の出入国管理及び難民認定法を「改正前の出入国法」という。
・入国審査官が被控訴人に対して平成16年11月1日付けでした、平成8年12月29日付け上陸許可及び平成13年8月10日付け上陸許可の各取消処分を「本件各上陸許可取消処分」という。
・控訴人東京入管局長が被控訴人に対して平成16年12月20日付けでした出入国法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を「本件裁決」という。
・控訴人主任審査官が被控訴人に対して平成17年1月28日付けでした退去強制令書の発付処分を「本件退去強制処分」といい、当該退去強制令書を「本件退去強制令書」という。
・平成16年法律第84号による改正前の行政事件訴訟法を「改正前の行訴法」という。
・経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約を「A規約」という。
1 事案の要旨等
 被控訴人は中国国籍を有し本邦(日本の領土。以下単に「日本」あるいは「我が国」ともいう。)に在留するする男性であるが、入国審査官から本件各上陸許可取消処分を受け、その後、入国審査官から出入国法24条2号(不法上陸)に該当する旨の認定を受け、次いで、東京入管特別審理官から同認定に誤りがない旨の判定を受け、さらに、法務大臣から権限の委任を受けた控訴人東京入管局長から本件裁決を受け、控訴人主任審査官から本件退去強制処分を受けた(本件退去強制処分当時17歳)。
本件は、被控訴人が、被控訴人は不法上陸当時9歳であったから不法上陸について帰責性がなく、かつ、被控訴人は9歳から日本において教育を受けており、日本での教育を継続する必要があること等を理由に、本件各上陸許可取消処分はその必要性を欠く違法があり、また、在留特別許可を付与すべきであったにもかかわらずこれを認めなかった本件裁決は違法であり、それを前提とする本件退去強制処分も違法であるなどと主張して、ア入国審査官に対しては本件各上陸許可取消処分の各取消しを、イ控訴人東京入管局長に対しては本件裁決の取消しを、ウ控訴人主任審査官に対しては本件退去強制処分の取消しを、それぞれ求めた事案である。
 原判決は、次のとおりの判決をした。
ア 入国審査官がした本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えをいずれも却下する。
イ 控訴人東京入管局長がした本件裁決を取り消す。
ウ 控訴人主任審査官がした本件退去強制処分を取り消す。
 控訴人らは、上記イ、ウを不服としてそれぞれ控訴をしたものである。
なお、被控訴人の入国審査官に対する訴えは上記アのとおりいずれも却下されたが、これに対する控訴はなく、この部分の判決は確定している。
2 関係法令の定め等
本件に関連する出入国法及び改正前の出入国法の規定は、次のとおりである。
 出入国法24条は、「次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。」とし、その2号において「入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した者」と定めている。
 改正前の出入国法47条2項は、「入国審査官は、審査の結果、容疑者が第24条各号の1に該当すると認定したときは、すみやかに理由を附した書面をもつて、主任審査官及びその者にその旨を知らせなければならない。」と規定している。
 改正前の出入国法48条1項は、「前条第2項の通知を受けた容疑者は、同項の認定に異議があるときは、その通知を受けた日から3日以内に、口頭をもつて、特別審理官に対し口頭審理の請求をすることができる。」とし、出入国法48条8項は、「特別審理官は、口頭審理の結果、前条第3項の認定(注:改正前の出入国法47条2項の認定に相当する。)が誤りがないと判定したときは、速やかに主任審査官及び当該容疑者にその旨を知らせるとともに、当該容疑者に対し、第49条の規定により異議を申し出ることができる旨を知らせなければならない。」と規定している。
 出入国法49条1項は、「前条第8項の通知を受けた容疑者は、同項の判定に異議があるときは、その通知を受けた日から3日以内に、法務省令で定める手続により、不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、法務大臣に対し異議を申し出ることができる。」と規定し、同条3項は、「法務大臣は、第1項の規定による異議の申出を受理したときは、異議の申出が理由があるかどうかを裁決して、その結果を主任審査官に通知しなければならない。」と規定している。
 出入国法49条6項は、「主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは、速やかに当該容疑者に対し、その旨を知らせるとともに、第51条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。」と規定している。
 出入国法50条1項は、「法務大臣は、前条第3項の裁決に当つて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が左の各号の1に該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。」とし、その3号において、「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。」と定めている。
3 前提事実
本件の前提となる事実は、次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨等により容易に認めることのできる事実は、その旨付記しており、その余の事実は、当事者間に争いのない事実である(なお、前後関係から明らかなときは年の記載を省くことがある。)。
 被控訴人の身分事項及び入国状況等
ア 被控訴人は、《日付略》、中国の黒竜江省において、いずれも中国国籍を有する外国人である父B及び母Cの間に出生した中国国籍を有する男性の外国人である。
被控訴人には、実妹として、《日付略》に中国の黒竜江省において被控訴人と同じ父母の間に出生したDがいる。(乙2、5、6、弁論の全趣旨)
イ Eは、日本国籍を有する女性であり、第二次大戦後に中国に残されて、中国で養育されたいわゆる中国残留邦人であるが、その後中国人と婚姻した。Eの夫の実兄の子がBである(Bは、Eの夫の甥に当たる。)。
Eは、被控訴人が出生した《日付略》より以前に、既に本邦に帰国していた。(甲9、乙7、弁論の全趣旨)
イ 被控訴人、B、C及びD(以下「被控訴人一家」という。)は、平成8年(1996年)12月29日、中国の上海から新東京国際空港(現在の成田空港。以下、改称の前後を問わず「成田空港」という。)に到着した。
Bは、東京入管成田空港支局入国審査官に対し、真実は日本国籍を有する者の子ではないのに、日本国籍を有するEの子であるとして、外国人入国記録の渡航目的の欄に「日本人の配偶者等」(日本人の子の趣旨)と記載して上陸申請を行った。また、被控訴人、C及びDは、東京入管成田空港支局入国審査官に対し、外国人入国記録の渡航目的の欄に「定居(定住)」と記載して上陸申請を行った。なお、上陸申請の際、被控訴人の外国人入国記録の日本滞在予定期間の欄には、「1年」と記載されていた。
Bは、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格を「日本人の配偶者等」(日本人の子として出生した者を含む。出入国法別表第2)とする上陸許可の証印を受け、被控訴人、C及びDは、在留資格「定住者」及び在留期間「1年」(平成9年12月29日まで)とする上陸許可の証印を受けた。
被控訴人一家は、同日、本邦に上陸した。被控訴人は、当時、9歳であった。(乙1から3まで、弁論の全趣旨)
 被控訴人の在留状況等
ア 被控訴人は、千葉県我孫子市長に対し、外国人登録法に基づく新規登録を申請し、平成9年1月8日、外国人登録証明書の交付を受けた(乙1、4の1)。
イ 被控訴人は、平成9年12月10日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行い、法務大臣は、同月22日、在留期間を1年(平成10年12月29日まで)として、これを許可した(乙1、2)。
ウ 被控訴人は、平成10年11月27日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行い、法務大臣は、同年12月9日、在留期間を1年(平成11年12月29日まで)として、これを許可した(乙1、2)。
エ 被控訴人は、平成11年12月3日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行い、法務大臣は、平成12年1月25日、在留期間を3年(平成14年12月29日まで)として、これを許可した(乙1、2)。
オ 被控訴人は、平成13年6月11日、法務大臣に対し、再入国許可申請をし、法務大臣は、同日、これを1回限り有効なものとして許可した(乙1、2)。
被控訴人は、平成13年6月29日、新潟空港から中国のハルピンに向け、再入国許可による出国をした(乙1、2)。
被控訴人は、平成13年8月10日、中国のハルピンから新潟空港に到着し、再入国許可による上陸許可を受けて本邦に上陸した(乙1、2)。
カ 被控訴人は、平成14年11月19日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行った(乙1、2)。
イ 入国審査官は、平成16年11月1日、BがEの子ではないことが判明したとして、B、C及びDに対する平成8年12月29日付けの各上陸許可等を取り消した。また、Bは、平成16年11月1日ころ、東京入管に収容された。
入国審査官は、被控訴人(当時17歳)に対して、平成16年11月1日、本件各上陸許可取消処分をするとともに、平成9年12月22日、平成10年12月9日及び平成12年1月25日付けでした各在留期間更新許可並びに平成13年6月11日付けでした再入国許可を取消し、さらに、上記アの在留更新許可申請を終止した。入国審査官は、被控訴人に対し、平成16年11月1日、本件各上陸許可取消処分を告知した。(甲1の1及び2、乙1、2、11、24、弁論の全趣旨)
 被控訴人の退去強制手続等
ア 東京入管入国警備官は、平成16年11月1日、被控訴人について違反調査を行い、その結果、被控訴人が出入国法24条2号(不法上陸)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして、同年11月16日、控訴人主任審査官から収容令書の発付を受け、11月19日、同令書を執行するとともに、同日、被控訴人を出入国法24条2号該当容疑者として、入国審査官に引き渡した。
控訴人主任審査官は、同日、被控訴人に対し、仮放免を許可した。(乙6、8から10まで)
イ 入国審査官は、平成16年11月19日、被控訴人、C及びDについて違反審査を行い、その結果、同日、被控訴人が出入国法24条2号に該当する旨の認定を行い、これを被控訴人に通知した。
被控訴人は、同日、特別審理官による口頭審理を請求した。(乙11、12)
ウ 東京入管特別審理官は、平成16年12月3日、被控訴人について口頭審理を行い、その結果、同日、入国審査官による上記認定に誤りがない旨判定し、被控訴人にこれを通知した。
被控訴人は、同日、法務大臣に対し、異議の申出をした。(乙13から15まで)
エ 法務大臣から権限の委任を受けた控訴人東京入管局長は、平成16年12月20日、被控訴人の上記異議の申出に理由がない旨の本件裁決をした。
本件裁決の通知を受けた控訴人主任審査官は、平成17年1月28日、被控訴人に本件裁決を通知するとともに、本件退去強制令書を発付した。
東京入管入国警備官は、同日、本件退去強制令書を執行し、控訴人主任審査官は、同日、被控訴人に対し、仮放免を許可した。(甲2、乙17から20まで)
オ なお、B、C及びDも、平成16年11月又は12月ころ、入国審査官から、出入国法24条2号(不法上陸)に該当する旨の認定を受け、次いで、東京入管特別審理官から同認定に誤りがない旨の判定を受け、さらに、法務大臣から権限の委任を受けた控訴人東京入管局長から出入国法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を受けた。控訴人主任審査官は、Bに対しては、平成16年12月20日に、C及びDに対しては、平成17年1月28日に、それぞれ退去強制令書を発付した。Dは、同日、仮放免されたが、B及びCは、退去強制令書の執行により、東京入管に収容された。
B及びCは、その後に、仮放免されたものの、平成17年5月15日、成田空港から出国した。(甲20、弁論の全趣旨)
カ 被控訴人は、平成17年3月7日、本件訴えを提起した。また、Dも、同日、東京地方裁判所に、入国審査官がDに対して平成16年11月1日付けでした、平成8年12月29日付け上陸許可及び平成13年8月10日付け上陸許可の各取消処分の取消し等を求める訴えを提起した。
(甲4の1ないし4、弁論の全趣旨、当裁判所に顕著な事実)
そして、被控訴人に対しては、平成18年3月28日、前記のとおりの原判決が言い渡されたが、Dに対しても、同年7月19日上記裁決及び退去強制令書の発付処分を取り消す旨の判決が言い渡され、控訴人らが控訴をした。
4 争点
本件の原審における主な争点は、次のないしのとおりであったが、被控訴人の入国審査官に対する訴えを却下した判決部分に関しては双方から控訴がされなかったので、当審における争点は、そのうちないしである。
(本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えないし請求について)
 本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えの適否
具体的には、本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは出訴期間を徒過した不適法な訴えか。
 本件各上陸許可取消処分の適法性
具体的には、本件各上陸許可取消処分は、法令の根拠に基づかないでされた違法なものであるということができるか。また、本件各上陸許可取消処分は、手続上又は実体上、違法なものであるということができるか。

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