退去強制令書発付処分等取消請求控訴事件
平成18年(行コ)第25号(原審:名古屋地方裁判所平成17年(行ウ)第24号)
控訴人(一審被告):国、被控訴人(一審原告):A
名古屋高等裁判所民事第3部
平成19年3月19日

判決
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 原判決を取り消す。
 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前のもの。以下「法」又は「入管法」という。)24条4号ロ所定の退去強制事由に該当するとの認定及び判定を受けた外国人である被控訴人が、法49条1項に基づいて法務大臣に対し異議を申し出たところ、法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入国管理局長(名古屋入管局長)によって上記申出は理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を受け、次いで、名古屋入国管理局主任審査官によって退去強制令書の発付処分(以下「本件発付処分」といい、本件裁決と併せて「本件各処分」という。)を受けたため、本件裁決には裁量権の範囲を逸脱又は濫用して在留特別許可を付与しなかった違法があり、本件裁決を前提とする本件発付処分も違法であると主張して、本件各処分の取消しを求めた事案である。
2 原審は、本件裁決は、重婚状態にない被控訴人とB(以下「B」という。)との婚姻を重婚状態にあると誤認し、婚姻関係の実体の存否に関する重要な事実を誤認してなされたものと認められ、その他被控訴人の在留を許すことが相当でないとする事情も認められないなどとして、本件裁決には、裁量権を逸脱又は濫用した違法があり、これを前提として発せられた本件発付処分も違法であるとして、本件各処分をいずれも取り消す旨の判決をした。
これに対し、控訴人が控訴した。
3 本件の前提となる事実(争いのない事実等)、争点及び争点に関する当事者双方の主張は、以下のとおり原判決を付加訂正するほか、原判決「第2 事案の概要等」欄の1ないし3に記載のとおりであるから、これを引用する。
 原判決21頁14行目冒頭から末尾までを次のとおり改める。
「退去強制事由のある外国人と日本人との間に婚姻関係があることは、(仮にこれが実体を伴うものであったとしても)不法残留という違法状態の上に築かれたものに過ぎないから、本来、法的保護に値するものとは言えず、在留特別許可の許否の判断の一事情となる場合があるに過ぎないと言うべきものである。
また「日本人の配偶者」として在留特別許可が付与されるためには、」 同23頁17行目と18行目の間に次のとおり付加する。
「 一方、Bについてみても、被控訴人がa病院に入院した際、Bは200万円から300万円の預金を有していたにもかかわらず、被控訴人が医療費を支払うことができないとして途中で退院するのをそのまま放置し、既に生じた費用約86万円についても、被控訴人が失業中で金銭的余裕がないとして支払を遅延させている(平成16年7月)にもかかわらず、上記預金をその支払に充てることもせず、かえって上記病院に対し、分納による支払金額の減額を申し出る(平成17年9月)などしている(上記医療費は、平成18年7月現在未だ25万5156円が未払いである。)。
これは、経済的相互扶助関係のある夫婦としては、極めて不自然である。しかも、この間平成17年2月には、Bは同人の姉及び姉の長女と共に海外旅行に出かけるなどしており、永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という特別な身分関係にある者としては甚だ不自然と言わざるを得ない。」 同23頁18行目「」を「」と改める。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、被控訴人の請求は、いずれも理由があるから、これを認容すべきと判断するものであるが、その理由は以下のとおり原判決を付加訂正するほか、原判決「第3 当裁判所の判断」1ないし4に記載のとおりであるから、これを引用する。
 原判決27頁24行目と25行目の間に次のとおり付加する。
「 また、被控訴人は、当審において、控訴人が当審で提出した各証拠(乙42号証ないし46号証、48号証の1・2、49号証、52号証、56号証、57号証、58号証の1・2、59号証の1・2)について、法律上の根拠なく違法に照会・収集された証拠であるとして、証拠排除を求め、また証拠(乙45号証、47号証、50号証、52号証、55号証)については、時機に後れたものであるとして、却下を求めた。
しかしながら、まず証拠(乙44号証、45号証、56号証)については、入国管理局内部の資料を証拠化したものであることが明らかであるから、被控訴人の上記指摘は失当である。また、証拠(乙42号証、43号証、46号証、48号証の1・2、49号証、52号証、57号証、58号証の1・2、59号証の1・2)については、法59条の2第1項に基づくものと認められ、これを覆すに足りる証拠はないから、この点に係る被控訴人の指摘もまた失当である。
さらに、証拠(乙45号証、47号証、50号証、52号証、55号証)については、いずれも時機に後れたものとまでは言えないし、実質的にみても、即時に取り調べることが可能で、被控訴人において反証・反論が比較的容易なものと考えられるものである。したがって、この点に係る被控訴人の主張は失当である。」
 同30頁22行目「望ましいのであるから、」の後に次のとおり付加する。
「それが実体を伴った真摯なものである限りは、」
 同31頁4行目「26号証、40号証」の後に「45号証、63号証、64号証、」を付加する。
 同35頁18行目と19行目の間に次のとおり付加する。
「なお、Cは、平成16年《日付略》に一旦パキスタンに強制送還されたが、その後何らかの方法で再度日本に入国し、平成17年《日付略》ころ、正規に在留中のインド人に成り済まして就労していたことが確認され、不法入国の容疑がある。しかし、その後同人は行方不明となり、未だ身柄は確保されていないが、本邦内に在留しているものと考えられている。また、Cが上記就労中に交流があったと考えられるパキスタン人(在留特別許可を待て在留中)が、名古屋入国管理局に収容中の被控訴人に複数回面会に訪れた事実等が認められる。」
 同36頁13行目「本国の」から14行目末尾までを次のとおり改める。
「本国の妻子の存在を確認されたが、これを否定し、さらに妻子が存在する旨の調査結果があるとの指摘を受けた上で再度この点について確認を受けたが、被控訴人は、その調査結果は間違いである、妻子はないし、結婚したことはない、未婚証明書等について、本国の父親に依頼して送ってもらったものであるが、本物である、もし疑いがあれば再度確認してもらって構わないなどと供述した。」
 同40頁3行目「特に」から4行目末尾までを次のとおり改める。
「特にこれを不自然とすべき的確な根拠はなく、通常の婚姻の経過、実体であったと認めるのが相当である。」
 同40頁11行目と12行目の間に次のとおり付加する。
「もっとも、これら離婚手続の履践やこれに係る被控訴人の言動には、控訴人が縷々指摘していたように種々の疑問点もないではない。平成16年8月4日の時点で既に離婚が成立し、被控訴人もその直後にその事実を知っていた(乙7号証)とすれば、被控訴人が、前記のとおり、同年11月8日の違反審査の際に何らこれに言及することなく妻子の存在を全面否定し、ことさらに未婚証明書等の真正を主張したことや、同年12月10日付けで被控訴人とBが連名により名古屋入国管理局長宛てに提出した上申書(乙25号証の1・2)にDは離婚すること及び離婚が成立次第これを証する書面を提出すること等が記載されていることは、被控訴人の語学力を考慮したとしてもなお、不自然さを否定しがたい面がある。また、被控訴人は、その後入手した離婚証明書(調停調書。甲8号証の1)の入手経過について、平成17年2月14日の口頭審理においては、本国の父親が送ってきたものである旨供述していた(乙7号証)にもかかわらず、本訴においては、本国の父親に書類を入手してもらい、たまたまパキスタンに帰郷していた知人を介して受領したものである旨当初とは異なる主張・説明がされている(甲25号証)。さらに、本訴係属後に被控訴人において調査の結果入手したというDとの離婚に関する訴訟書類一式(甲15号証の1ないし9)についても、被控訴人はこれらを本国の父親から郵送にて受領したというのであるが(原審被控訴人本人)、これらの書類には東京に所在するパキスタン大使館の一等書記官による認証が付されており、被控訴人が全体としていかなる経過でこれらの書面を取得したのかについても疑問の余地が残るところである。
しかしながら、証拠(甲27号証の1・2)によれば、パキスタン大使館の二等書記官から控訴人に対し、被控訴人については平成16年8月4日に離婚が成立している旨の回答がされていることが認められ、同回答についてその信用性を否定すべき特段の事情も認められないことからすると、これと内容を同じくする上記各書類はいずれも真正なものであり、被控訴訴人が縷々指摘していたように種々の疑問点もないではない。平成16年8月4日の時点で既に離婚が成立し、被控訴人もその直後にその事実を知っていた(乙7号証)とすれば、被控訴人が、前記のとおり、同年11月8日の違反審査の際に何らこれに言及することなく妻子の存在を全面否定し、ことさらに未婚証明書等の真正を主張したことや、同年12月10日付けで被控訴人とBが連名により名古屋入国管理局長宛てに提出した上申書(乙25号証の1・2)にDは離婚すること及び離婚が成立次第これを証する書面を提出すること等が記載されていることは、被控訴人の語学力を考慮したとしてもなお、不自然さを否定しがたい面がある。また、被控訴人は、その後入手した離婚証明書(調停調書。甲8号証の1)の入手経過について、平成17年2月14日の口頭審理においては、本国の父親が送ってきたものである旨供述していた(乙7号証)にもかかわらず、本訴においては、本国の父親に書類を入手してもらい、たまたまパキスタンに帰郷していた知人を介して受領したものである旨当初とは異なる主張・説明がされている(甲25号証)。さらに、本訴係属後に被控訴人において調査の結果入手したというDとの離婚に関する訴訟書類一式(甲15号証の1ないし9)についても、被控訴人はこれらを本国の父親から郵送にて受領したというのであるが(原審被控訴人本人)、これらの書類には東京に所在するパキスタン大使館の一等書記官による認証が付されており、被控訴人が全体としていかなる経過でこれらの書面を取得したのかについても疑問の余地が残るところである。
しかしながら、証拠(甲27号証の1・2)によれば、パキスタン大使館の二等書記官から控訴人に対し、被控訴人については平成16年8月4日に離婚が成立している旨の回答がされていることが認められ、同回答についてその信用性を否定すべき特段の事情も認められないことからすると、これと内容を同じくする上記各書類はいずれも真正なものであり、被控訴人については、同日限りDとの間で離婚が成立したものと認められ、また前記のとおりの被控訴人の一見不自然な言動も、被控訴人の語学力や知識の欠如に由来するものと認めるのが相当というべきことになる。」
 同40頁17行目「あること、」の後に次のとおり付加する。
「⑤Bは、自ら十分な預金がありながら、被控訴人に十分な医療を受けさせることなく、病院に対し分納による支払金額の減額を求めるなど、経済的相互扶助関係にある夫婦としては不自然な態度を取っていること等、」
 同41頁16行目と17行目の間に次のとおり付加する。
「⑤の点についても、Bが必要な出捐をなさず、被控訴人に必要な治療を受けないまま退院することを余儀なくさせた事実を認めるに足りる的確な証拠はない。そして、Bには当時未だ学生である自身の子があったこと等をも勘案すれば、その当否は別として、Bが自らの預金を取り崩さず、医寮費を分納する等の措置がとられたからといって、ただちに被控訴人とBとの婚姻の実体がないことの証左になるものとは到底言えない。
その他、控訴人が当審において縷々主張するところは、いずれも婚姻の実体がないことを根拠づけるに足りるものとは言えないというべきである。」
 同43頁8行目末尾に次のとおり付加する。
「控訴人は、当審において、Cが不法に再入国した上、他人に成り済まして不法就労していること等を縷々主張し、これに沿う立証をする。しかしながら、結局のところ、これに披控訴人が積極的に荷担している事実を認めるに足りる的確な証拠はないと言わざるを得ない。」
2 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ

03-5809-0084

<受付時間>
9時~20時まで

ごあいさつ

VISAemon
申請取次行政書士 丹羽秀男
Hideo NIwa

国際結婚の専門サイト

VISAemon Blogです!

『ビザ衛門』
国際行政書士事務所

住所

〒150-0031 
東京都渋谷区道玄坂2-18-11
サンモール道玄坂215

受付時間

9時~20時まで

ご依頼・ご相談対応エリア

東京都 足立区・荒川区・板橋区・江戸川区・大田区・葛飾区・北区・江東区・品川区・渋谷区・新宿区・杉並区・墨田区・世田谷区・台東区・中央区・千代田区・千代田区・豊島区・中野区・練馬区・文京区・港区・目黒区 昭島市・あきる野市・稲木市・青梅市・清瀬市・国立市・小金井市・国分寺市・小平市・狛江市・立川市・多摩市・調布市・西東京市・八王子市・東久留米市・東村山市・東大和市・日野市・府中市・福生市・町田市・三鷹市・武蔵野市 千葉県 神奈川県 埼玉県 茨城県 栃木県 群馬県 その他、全国出張ご相談に応じます