在留特別許可不許可処分取消等請求控訴事件
平成19年(行コ)第127号
控訴人:Aほか2名、被控訴人:国
大阪高等裁判所民事第6部(裁判官:渡邉安一・安達嗣雄・明石万起子)
平成20年5月28日

判決
主 文
一 原判決中被控訴人と控訴人A関係部分を取り消す。
二 大阪入国管理局長が平成一六年一二月二二日付けで控訴人Aに対してした出入国管理及び難民
認定法四九条一項による異議の申出が理由がない旨の裁決を取り消す。
三 大阪入国管理局主任審査官が平成一六年一二月二八日付けで控訴人Aに対してした退去強制令
書発付処分を取り消す。
四 控訴人B及び控訴人Cの各控訴をいずれも棄却する。
五 控訴人Aと被控訴人に関する訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とし、控訴人Bと被控
訴人に関する控訴費用は控訴人Bの負担とし、控訴人Cと被控訴人に関する控訴費用は控訴人C
の負担とする。
事実及び理由
第一 控訴の趣旨
一 大阪入国管理局長が平成一六年一二月二二日付けで各控訴人に対してした出入国管理及び難民
認定法四九条一項による異議の申出が理由がない旨の各裁決をいずれも取り消す。
二 大阪入国管理局主任審査官が平成一六年一二月二八日付けで各控訴人に対してした各退去強制
令書発付処分をいずれも取り消す。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二 事案の概要及び訴訟の経過
一 本件は、中華人民共和国の国籍を有する外国人である控訴人らが、それぞれ出入国管理及び難
民認定法四九条一項に基づいて法務大臣に対し異議の申出をしたものの、法務大臣より権限の委
任を受けた大阪入国管理局(以下「大阪入管局長」という。)よりそれぞれ上記異議の申出が理由
がない旨の裁決を受け、引き続いて大阪入国管理局主任審査官(以下「大阪入管主任審査官」とい
う。)よりそれぞれ退去強制令書の発付処分を受けたことから、上記各裁決及び上記各退去強制令
書発付処分の取消しを求めた抗告訴訟である。
二 原審は、控訴人らに対し、在留特別許可を与えることなく、その異議の申出に理由がないとし
た大阪入管局長の判断が、全く事実の基礎を欠き、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠く
こと等により社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるということはできず、そ
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の裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったものとして違法であるとは認められず、上記各裁
決は、いずれも適法であり、また、入管法四九条五項は、主住審査官は、法務大臣ないし法務大臣
から権限の委任を受けた地方入国管理局長から同条一項の規定に基づく異議の申出が理由がない
と裁決した旨の通知を受けたときは、速やかに退去強制令書を発付しなければならないとしてお
り、主任審査官には、退去強制令書を発付するか否かについて裁量の余地はないと解されるとこ
ろ、上記各裁決が適法であるから、上記各退去強制令書発付処分もいずれも適法であるとして、
控訴人らの各請求をすべて棄却した。
三 これに対し、控訴人らが各控訴を申し立てた。
四 本件事案の概要は、原判決三頁四行目「又は」を「若しくは」に改めるほかは、原判決「事実及
び理由」中「第二 事案の概要」一ないし三記載のとおりであるから、これを引用する。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所は、控訴人Aの請求は理由があり、控訴人B及び控訴人Cの各請求はいずれも理由が
ないと判断するが、その理由は、以下のとおりである。
二 法務大臣及び法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長の裁量権について
原判決二一頁一一行目から二四頁九行目記載のとおりであるから、これを引用する。
三 事実関係について
以下のとおり補正するほかは、原判決二四頁一〇行目から三一頁五行目記載のとおりであるか
ら、これを引用する。
 原判決二九頁七行目から一九行目までを次のとおり改める。
「ウ 控訴人Aは、八歳時(小学校二年生時)に控訴人C及び控訴人Bに連れられて中国から
本邦に入国したが、本邦に入国する理由については全く分からず、本邦に入国後も何故日本に
いるのかを深く考えたことはなかった。
控訴人Aは、本邦入国後間もなく、東大阪市立D小学校に編入し、その直後は、一部科目を除
いてクラス仲間と一緒に授業を受けることはほとんどなく、別の場所で、外国人の子供が日本
語を勉強するために開かれていた日本語教室でほとんどの時間を過ごしていた。
控訴人Aは、クラス内では日本語を話せなかったことから、友達ができず、また、クラスの他
の生徒から馬鹿にされていると感じ、孤独な毎日であったため、何とか日本人の友達を作りた
いと思い、夜遅くまで一生懸命日本語の勉強をした結果、回りの大人より早く日本語を覚える
ことができ、日本語を覚えるに連れ、クラスで過ごす時間が増え、日本語で話しができるよう
になったことから、クラス仲間から話しかけられる機会も多くなった。
そして、控訴人Aは、小学校五年生で、小学校で使うほとんどすべての日本語を理解するこ
とができるようになり、苦手であった教材も、質問ができたり、解説が理解できるようになっ
たため、成績も伸び、また、バスケットボール部に入部して部活動にも励み、勉強や運動を通じ
て、日本社会に溶け込んでいった。
控訴人Aは、その後、控訴人らの上記オの各転居に伴い、平成一一年六月ころ(同五年生時)
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に八尾市立E小学校に、平成一二年一〇月ころ(同六年生時)に大阪市立F小学校にそれぞれ
転校した。
控訴人Aは、平成一三年四月、大阪市立G中学校に入学し、入学後は、勉学に励み、また、バ
スケットボール部に入部したほか、少林寺拳法の道場に入門するなどし、充実した中学生活を
送り、三年間にわたり、学級委員長をしていたこともあって、同中学の卒業式において、卒業生
一八〇名を代表して答辞を述べた。
控訴人Aは、中学校に入学するころは、中国語を忘れつつあることに気付いたが、これから
も日本で生活を続ける以上、中国語を忘れても差し支えはないと考え、あえて、中国語を勉強
することはしなかった。
また、控訴人Aは、中学校に入学したころ、親戚のH(昭和五一年八月二三日生)と初めて会
い、その後同人と交流を深め、同人を兄とも慕うようになった。
控訴人Aは、教師の薦めもあって、I高校を受験することに決め、勉学に励んだ結果、同高校
の普通科特進文系コースに合格し、平成一六年四月、同高校に入学し(同高校には「J」夫婦と
共に住んでいるものとして手続がされた。)、同高校においては、大学進学を目指してさらに勉
学に励むほか、学級委員長を務め、課外活動にも積極的に参加するなどし、中国語の理解が衰
えるのに反比例して、日本語の理解には全く不自由がなくなったため、充実した高校生活を送
り、弁護士になるという夢の実現に向けて大学受験めざして努力していた。
控訴人Aは、高校在学中、大阪入国管理局長の平成一六年一二月二二日付け裁決及び大阪入
国管理局主任審査官の平成一六年一二月二八日付け退去強制令書発付処分を受け、強い精神的
打撃を受けたが、大学受験勉強に打ち込み、本件訴え提起後(本件裁決後)の平成一八年一一月、
K大学法学部法律学科の入学試験に合格した。
控訴人Aは、将来弁護士になって日本社会に貢献したいと考えている。
控訴人Aは、温厚・誠実な人柄で、級友からの信頼も厚く、学業においても向上心があり、こ
れまで、問題行動は全くなく、健全で充実した学生生活を送り、本件裁決時には、完全に日本社
会に溶け込んでいた。
控訴人Aは、両親と離れ離れになっても、日本での生活を続けることを希望している。」
 同三一頁四行目から五行目の「となっている。」を「となり、平成一八年三月一六日より大阪
府立精神医療センターで通院加療を受けている。」に改める。
四 大阪入国管理局長が控訴人C及び控訴人Bに対して在留特別許可を付与しなかったことが裁量
権の逸脱又濫用に当たるか否かについて
原判決三一頁九行目から三三頁三行目、三六頁五行目から一六行目までの控訴人C及び控訴人
B関係部分記載のとおりであるから、これを引用する。
なお、後記のとおり、控訴人Aに対する本件裁決及び本件退去強制令書発付処分は違法として
取り消すことになるところ、控訴人Aが引き続き本邦に在留し、控訴人C及び控訴人Bが本邦か
ら退去を強制されることになると、親子が離れ離れになり、控訴人Aが、両親の監護を受けられ
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ず、経済的に生計を維持することが困難になることも考えられるが、後記のとおり、控訴人Aの
みが引き続き本邦に在留することになったとしても、経済的に生計を維持して行くことが可能で
あり、また、その年齢、日本語の能力、交友関係等から、両親と生活を別っても、控訴人Aの福祉
に悪影響を及ぼすおそれはないと推認されるから、控訴人Aに対する本件裁決及び本件退去強制
令書発付処分を違法として取り消すからといって、控訴人C及び控訴人Bに在留特別許可を付与
すべきであるということにはならない。
五 大阪入管局長が控訴人Aに対して在留特別許可を付与しなかったことが裁量権の逸脱又は濫用
に当たるか否かについて
 前提事実及び上記三のとおり引用認定した事実によれば、控訴人Aは、小学校二年生時に、
控訴人Cが日本人の子として出生した者の実子であることを偽装し控訴人Bが同Cの配偶者と
して本邦に上陸する際、そのような事情を全く知らずに、控訴人C及び控訴人Bに連れられて
本邦に在留し、その後三回の在留期間更新許可を受けて、本件各裁決に至るまでに約八年間本
邦に在留していたものであるが、入国手続や在留期間更新許可等の手続はすべて控訴人C及び
控訴Bらが行い、控訴人Aは、全く関与しておらず、控訴人C及び控訴人Bの不法入国等の事
実の発覚及び本件裁決及び本件退去強制令書発付処分に至る経緯の中で、初めて控訴人C及び
控訴人Bによる不法入国等及びその後の不法在留の事実を知るに至ったこと、控訴人Aは、本
邦入国後東大阪市内の小学校に編入した後、中学校、高等学校に進学し、その学業成績は優秀
であり、また、部活動に従事し、学級委員長を務めるなどし、それらが評価されて、卒業式にお
いて、卒業生を代表して答辞を述べるという栄誉を担っていること、控訴人Aは、日本での教
育を受け、遅くとも中学校を卒業するころには、他の日本人の生徒らと同程度の日本語能力を
備えるに至り、これに対して、中国語については、日常会話程度の語学能力であること、控訴人
Aは、本件裁決時において、一六歳(高校生)であり、自らの生き方や将来についての判断能力
もある程度備わってきており、控訴人C及び控訴人Bと離れ離れになっても、日本での生活を
続けることを希望していることが認められる。
また、控訴人Aの周囲には、同控訴人の在留を願う教師や友人が多数存在しているが(甲三
の一ないし四、四の一・二、三〇の一ないし四、三一。その中には、控訴人Aに対する大学進学
後の経済的援助を確約する教師も存在する(甲三一)。それらの書証は、本件裁決後に本件訴訟
中に証拠として提出されたものであるが、そこに記載の事実は、ほとんど本件裁決時に存在し
た事情と評価できる。)、そのことは、控訴人Aが日本社会の溶け込み、その人柄や能力等が多
大な信頼や評価を受けていることを示すものであること、控訴人Aが兄とも慕う縁者であるH
(一九七四年八月二三日生)は、仮に同控訴人の在留特別許可のみが認められた場合でも、経済
的援助等を通じて同控訴人の生活を支援する意思を表明していること(甲一六、原審証人H。
本件裁決時も同様の考えであったと推認される。)などから、控訴人Aのみが日本で生活する
ことになったとしても、生活を維持して行くことが可能であり、また、控訴人Aと控訴人C及
び控訴人Bと離れ離れになることになったとしても、控訴人Aの福祉に悪影響を及ぼすおそれ
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もないと推認されること、控訴人Aは、本件訴訟提起後(本件裁決後)の平成一八年一一月、K
大学法学部法律学科の入学試験に合格していることなどの事情が認められ、これに対し、本件
裁決及び本件退去強制令書発付処分により控訴人Aは、中国での生活を強いられることになる
が、控訴人Aは、小学校低学年時から高校まで、日本において教育を受け、言語、生活習慣とも
日本の生活に溶け込んでおり、今後、約一〇年前の幼少時に生活したにすぎない中国での生活
を強いられることは、日本において、小学校低学年時から高校生までの重要な人格形成の時期
に、これまで懸命に努力し、築き上げてきた学業等の成果や身に付けた日本の生活習慣等がほ
とんど無に帰すおそれがあるばかりでなく、控訴人Aが中国の生活に溶け込むには多大の困難
や相当の年月と努力(少なくとも日本の生活に溶け込むのに要した年月や努力と同等ないしそ
れ以上の年月と努力)を要するであろうと推測され、その被る不利益の内容・程度は深刻かつ
重大であると認められる。
 上記のとおり、控訴人Aは、同控訴人の如何ともし難い事情とはいえ、小学校二年生時に控
訴人B及び控訴人Cに連れられて本邦に不法上陸し、以後不法在留を続け、客観的には、我が
国の出入国管理行政の公正な運営に著しい弊害を生じさせたことは否定できないものの、その
後の不断の努力により、日本社会に溶け込んだもので、本件裁決時には、特別に在留を許可す
べき事情があると認めるときに該当することは明白であったところ、それにも関わらず、本件
裁決がなされたのは、入国警備官や入国審査官において、控訴人Aから、同控訴人の生活状況
等についてある程度の事情聴取をしているものの、上記認定の事情(本件裁決時までの事情。
以下同じ。)について十分聴取しなかったことにより、大阪入管局長は、上記認定の事情につい
て十分考慮することなく本件裁決をするに至ったもので、仮に、大阪入管局長が控訴人Aに関
する事情を正しく認定していれば、控訴人Aに在留特別許可を付与した可能性が高かったもの
と推認される。
 そうすると、大阪入管局長の判断は、全く事実の基礎を欠くことが明らかであるか、仮に、大
阪入管局長が上記認定の事情を把握していたにもかかわらず、それを軽視し、控訴人Aが客観
的に我が国の出入国管理行政の公正な運営に著しい弊害を生じさせた点を重視して、本件裁決
をするに至ったのであれば、その判断は、事実に対する評価が明白に合理性を欠くことにより、
社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことは明らかであり、いずれにしても、本件裁決は、裁
量権の範囲を超え、又はその濫用があったものとして違法というべきであって、取り消しを免
れない。
 被控訴人の主張について
ア 被控訴人は、不法上陸や不法在留について控訴人Aに帰責性が認められないとしても、そ
のことによって我が国の出入国管理行政の公正な運営に著しい弊害を生じたこと自体を否定
することができないのみならず、当該外国人に帰責性がないからといって在留特別許可を付
与することとすれば、どのような違法な手段や方法を使っても、その点について責任のない
者には在留特別許可が認められるとの期待を増長させ、その結果、入国管理行政上、看過し
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得ない支障を生じると主張する。
確かに、控訴人Aに不法上陸、不法在留に帰責性が認められないとしても、このことによ
って我が国の出入国管理行政の公正な運営に著しい弊害を生じたこと自体を否定することが
できないことは被控訴人主張のとおりであり、帰責性の有無を殊更重視するのが相当でない
ことも、被控訴人主張のとおりである。また、仮に、不法上陸や不法在留について帰責性が認
められないことをもって、当該人物に在留特別許可を付与することになれば、被控訴人が懸
念する事態が生じ得ることは一般論としては否定できない。
しかし、本件においては、不法上陸や不法在留について帰責性が認められないことをもっ
て、控訴人Aに在留特別許可を付与すべきであるというものではなく(当裁判所も、その点
のみでは、控訴人Aに在留特別許可を付与する理由にはならないと考える。)、上記認定の控
訴人A自身の事情(その中には、不法上陸や不法在留について控訴人Aに帰責性が認められ
ないことも一つの事情として考慮されてよいと考えられる。)や同控訴人を取り巻く事情や
環境等を総合考慮して、在留特別許可を付与すべきであると判断するものであるから、本件
において、上記のような事情を総合考慮して控訴人Aに在留特別許可を付与するからといっ
て、どのような違法な手段や方法を使っても、その点について責任のない者には在留特別許
可が認められるとの期待を増長させることにはならないといえる(ちなみに、本件において、
控訴人C及び控訴人Bにおいて、控訴人Aに在留特別許可を付与させることを目的として、
同控訴人を連れて本邦に入国・在留したとは認められない。)。
イ 被控訴人は、控訴人Aが本邦の大学への進学を予定していたことや、控訴人Aの大学合格
といった事情は、不法滞在という違法状態の継続を前提として、仮放免という退去強制手続
が終了するまでの一時的な状態において形成された事実にすぎない上、本件裁決後の事情で
あることから、在留特別許可の許否を判断するに当たって積極的に評価すべき事情ではない
と主張する。 
しかし、不法滞在という違法状態の継続については、控訴人Aに帰責性が認められないの
であるから、控訴人Aを自ら違法状態を作出した者と同一視して、不法滞在という違法状態
の継続中に築かれた事情という点を強調することは相当でなく、また、本件において、控訴
人Aに在留特別許可を付与するかどうかの判断については、あくまで、本件裁決時までの控
訴人A自身の事情や同控訴人を取り巻く事情・環境等に基づいており、上記認定中の本件裁
決後の事情についても、本件裁決時に予測可能な事情であり、かつ、本件裁決時までの控訴
人Aの性格や行状等の認定に資するものであって、本件裁決当時予測不可能な事後の事情を
積極的に評価して、控訴人Aに在留特別許可を付与すべきであるとする判断をしているもの
ではない。
ウ 被控訴人、控訴人Aが一定の中国語の能力を有していることなどにかんがみれば、同控訴
人が中国社会に溶け込むことに伴い生じ得る困難の程度は、いわゆる帰国子女が通常経験す
る範囲内にとどまるものと推認することができ、この困難さをもって控訴人Aが退去強制に
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よって受ける不利益が極めて大きいとまでいうことはできないと主張する。
しかし、控訴人Aが中国社会に溶け込むことに伴い生じ得る困難の程度について、事情を
異にする帰国子女が通常経験する範囲内にとどまるものと推認してよいかどうかは問題で
あるのみならず、本件裁決及び本件退去強制令書発付処分により生じ得る控訴人Aの不利益
は、それにとどまらず、控訴人Aの我が国における上記のような学童期からの長年にわたる
努力の成果をほとんど無に帰させることになりかねない重大なものであり、控訴人Aに在留
特別許可を付与すべきかどうかの判断にあたり、控訴人Aが中国社会に溶け込むことに伴い
生じ得る困難について、事情の異なる帰国子女の不利益との比較により論じるのは相当でな
い。
エ 被控訴人は、本件裁決当時の控訴人Aの年齢及びそれまでの控訴人Aが両親と共に生活し
養育され、本件裁決当時も現に両親の直接の監護を受けていたことを考えれば、控訴人Aを
控訴人C及び控訴人Bと引き離すことも、その福祉や適切な監護の観点から必ずしも適当で
ないと主張する。
しかし、上記認定のとおり、控訴人Aは、本件裁決時において、一六歳であり、自らの生き
方や将来についての判断能力もある程度備わってきているところ、両親と生活を別っても、
日本での生活を続けることを希望していること、同控訴人が兄とも慕うHは、仮に、同控訴
人の在留特別許可のみが認められた場合でも、経済的援助等を通じて同控訴人の生活を支援
する意思を表明していることなどから、控訴人Aのみが本邦で生活することになっても、生
活を維持して行くことが可能であり、また、控訴人C及び控訴人Bと異国で生活することに
なったとしても、控訴人Aの福祉に悪影響を及ぼすおそれもないと推認される。
オ したがって、被控訴人の主張はいずれも採用できない。
六 そして、入管法四九条五項は、主任審査官は、法務大臣ないし法務大臣から権限の委任を受け
た地方入国管理局長から同条一項の規定に基づく異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を
受けたときは、速やかに退去強制令書を発付しなければならないとしており、同法第五章の規定
する退去強制の手続等に照らしても、主任審査官には、退去強制令書を発付するか否かについて
の裁量の余地はなく、上記通知に従って退去強制令書を発付するほかないと解される。そうする
と、上記のとおり、控訴人Aに対する本件裁決は違法であるから、それに基づく控訴人Aに対す
る本件退去強制令書発付処分も違法であり、取消しを免れないというべきである。
第四 結論
よって、控訴人Aの請求を棄却した原判決は不当であるから、原判決中被控訴人と控訴人A関
係部分を取り消した上、本判決主文第二項及び第三項のとおり判決することとし、控訴人B及び
控訴人Cの各請求を棄却した原判決は相当であり、控訴人C及び控訴人Bの各控訴はいずれも理
由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

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