[事例7] ポルトガルのレンガ職人を「技能」で招聘
1回目:在留資格「企業内転勤」認定証明書
○申 請:2013年4月12日
●不許可:2013年7月11日
2回目:在留資格「技能」認定証明書交付申請
○申請:2013年7月26日
◎許可:2013年10月25日(3ケ月)
来日:2013年10月9日、2013年10月16日に工事着手する為
○変更許可申請「短期滞在」⇒「技能」
2013年10月28日
◎許可:2013年10月28日
相談内容
ポルトガルに本社があるレンガ溶鋼炉の会社の日本のL子会社(100%出資)が、日本の企業から、ガラス製造に必要なレンガ溶鋼炉の工事を受注し、ポルトガルの本社から、「企業内転勤」で、技術者3名を招聘しようとしましたが、不交付となる。
2013年7月10日、14名の技術者が必要であり失敗は許されない相談。
受入れ側の要望
ポルトガルの本社は、社員数も1,000人以上で、ロシア、アフリカ、中近東、東南アジアと世界中に事業を展開しています。
日本への事業展開として、資本金500万円を投資して、平成24年2月1日にさいたま市に社員2名で設立しました。
前回の申請では、在留資格「企業内転勤」の要件である一定水準以上の学問・技術に達していないと言われました。
今般、N株式会社より、溶鉱炉(Tin Bath)の煉瓦工事を受注し、ポルトガル本社より、熟練技術者14名を派遣する事になり、工事期間は、2013年10月16日〜2014年2月9日(約4ケ月)となっております
N株式会社には、これまでは専属の溶鉱炉(Tin Bath)がなく、ライバル会社であるA株式会社のI下請会社に発注していました。しかしライバル企業のI下請会社に発注すると、N株式会社のノウハウや独自性が盗まれることになり、会社の秘密保持の為にも、日本のL子会社に工事を発注することが決定しました。
日本にガラスを持って来たのは、ポルトガル人であり、こうした技術は古くからヨーロッパ、とりわけポルトガルに起因しており、熟練した若い技術者が大勢活躍している事情があります。
日本は、レンガを製造する技術は高いのですが、地震が多い為、レンガの建造物は少なく、レンガで施工・組立する技術が発達せず、熟練した耐火レンガ職人がいないのが現状です。
申請人の状況
在留資格「企業内転勤」の上陸審査基準には、申請に係る転勤の直前にポルトガルの本社において、「技術」の業務に従事している場合で、その期間が継続して1年以上あることとあります。
技術者14名は、全員が中学校卒業でありますが、ポルトガルの本社には2年〜14年ほど勤務しているので、条件はクリアしていました。
問題は、レンガ職人の仕事が、在留資格「技術」に該当するかにあります。在留資格「技術」の中には、土木建築の設計者はありますが、施工技術者はありません。以上から「技能」の外国様式の建築物の建築技術者に該当するか検討する。
レンガ職人の仕事が、在留資格「技能」の「外国に特有の建築又は土木に係る技能について10年以上の実務経験を有する者」に該当しないかと判断。
(当該技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合にあっては、5年)の記述に関して、
指揮監督する者(1人)は10年の実務経験が必要であり、その他の者は5年以上の実務経験で十分であるともわかりました。
技術者14名の実務経験をもう一度見直すと、ポルトガル本社での実務経験10年以上が1人、5年以上は3人しかいませんでした。
しかし前職の実務経験も合算できると判断し、ポルトガル本社に職歴を確認したところ、10年以上が6人、5年以上が8人で、全員がクリアしました。
添付資料
①指揮・監督者について
10年以上の実務経験を有するポルトガル人1人について、証明する資料を作成し添付しました。
① 採用条件通知書(14名分)
1. 給与 2.期間 3.勤務先 4.仕事内容
② ポルトガル本社のパンフレット
③ 図面
④ 写真
⑤ 見積書
⑥ 注文書
⑦ 履歴事項全部証明書
⑧ 決算報告書
⑨ 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
⑩ 理由書
⑪ 14名の履歴書
レンガ職人の仕事の説明(理由書から抜粋)
自動車のフロント、サイド、リアガラスに使用しているガラスは、微妙に曲面しており、表面をツルツルにする必要があります。
溶鉱炉(Tin Bath)の中には、500℃で溶けた錫(Tin)が溶けており、その中を1,200℃で溶かしたガラスを、徐冷しながら、溶けた錫の中を通していき、滑りやすくツルツルにしていきます(イギリス人が発明)。こうした過程を経て、強度があって柔らかいガラスが初めて完成します。
溶鉱炉(Tin Bath)は幅7m、高さ5m、奥行50mあり、仕事内容は釜の内側にレンガを積んでいく作業になります。釜の内側に約600個のレンガを積んでいくわけですが、長さ1mもあるレンガとレンガをモルタルで3.2mm単位で接着していく作業ですが、0.5mm狂っても、溶鉱炉は奥行50mもあるので、大幅に狂ってしまいます。
またレンガは長さ1m・重さ3kgもあるので、専用のクレーンを使います。レンガとレンガの隙間は、高熱により隙間がなくなる為、溶けた錫(Tin)はこぼれる事はありません。
天井と壁にも耐火レンガを使い、エネルギーの節約と断熱効果を図っています。バーナーで熱を加えると部分的に熱くなるので適さない為、電気コイルで熱を加える為、99%均一になります。
耐火レンガを使う理由は、コンクリートでは、200℃以上になるとボロボロになってしまうので使えないからです。耐火レンガ(カーボンレンガ)は、シリカを使っており1,200〜1,500℃まで耐えられます。
ガラスの成分がレンガと反応して、摩耗するので、リジェネレーターで燃えた空気を回して熱交換しています。
アーチ状の枠を作る為、足場を作る技術もかなり高度な技術を要します。